WORLD OF THE VOICE

□境界‐boundary
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近くで物音がする。
目を開けて確認すると部屋の扉が開いていた。


「不動?」


姿が見えないから名前を呼ぶと、リビングから不動の顔が見えた。

その隣には…望さん?


「おきたか。…金は確認しておけ」


金。
その言葉に胸が傷んで、少し泣きそうになった。
所詮は飼われた身でしかないことを実感させられたみたいで。


「…おはようございます」


しんとした空気の中、俺を見ながら望さんが口を開いた。
…てか睨まれてるよ


「お、おはようございマス」


かなり緊張するんですけど…。

「先日は、…すみませんでした」

「あ、全然いいです。むしろ俺のが悪かったっていうか…気にしないで下さい」

「いえ、組長の大切な方と知らなかったとはいえ──」


ヤバい、こういう展開マジで困るって!てか不動助けてよー!


「望。もういい」


そう言うと望さんは引き下がってくれた。不動様々だな。


「なー学校、普通に行くの?」


転校初日ってなんか緊張するよな。

「心配するな、愁哉と鷹矢と同じクラスにしておいた。それに校内案内は祐哉に頼んでおいたから大丈夫だ」


それって不正だよな…?
やっぱ不動は怖ぇーよ。


そのあと朝食を食べて、不動に学校まで送ってもらった。

黒塗りのベンツは予想通りすげぇ目立ってたけど。



「これを」

校門についたときに不動が俺を呼び止めた。
何、って返す前に何かを投げられる。…携帯?


「帰りに迎えにくる。連絡しろ」


って料金かかるし!
十円あれば公衆電話使えるから!


「いいって、金かかるし」


困ったようにそう言えば、不動はいつものように不適に笑って。

「今夜しっかり働いてもらうから心配ない」


「なんつー恥ずかしいことを言うんだよ!」


一応外だって!


「別に“ナニをする”とは言ってないぞ?」


なッ!
まるで俺が勘違いをしたみたいで、不動を睨みつけた。


「恥ずかしいのはお前だな、零?」


最低だ!

たぶん今の俺は顔が真っ赤だと思う。
恥ずかしすぎて不動の顔が見れず、早足で門を後にした。




校舎に入り、なんとか職員室に辿り着く。
担任は充分優しそうな人で、俺は安心してほっと息を付いた。

教室に入り自己紹介をする。
なんとかうまくやっていけそうなクラスでよかった。
窓側に目をやると、鷹矢が大きく手を振っていた。

…本当に不動の弟なのかと偶に疑いたくなる。


「じゃあ暫くは萩之内君の隣に座ってね」


担任に施されて愁哉の隣まで行く。


「よろしく、愁哉」

「こちらこそ、零」


とりあえず挨拶をしてから、可笑しくて二人で笑った。


「錦戸君って“姫”と知り合いなの?」


そんな俺達の様子を見て、不意に近くの席の子が俺に話しかけてきた。
てか姫って、


「愁哉、姫って呼ばれてんの?」


俺がそう言うと、愁哉は顔を真っ赤にして必死に否定した。
愁哉にぴったりで可愛いと思うけど、怒られそうだから黙っておいた。


その日は初めての授業に戸惑いながらも、楽しく過ごせたと思う。

放課後は祐哉さんに校内案内をしてもらってから帰宅した。




その日の夜も、やっぱり不動とは肌を重ねた。

でも、俺はずっと胸が痛くて、きっと不動は気付いていないんだろうけど、出来るならばこんな辛い生活は抜け出したいと考えた。








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