dream

□片恋同盟
1ページ/1ページ






好き、すき、スキ...

何でこんなに想ってんのに伝わんないかな。



「宍戸、亮...」



届くはずもないのに呟いてみる。

あー、いつから私こんな乙女になっちゃったんだろ。



放課後、一人で教室の窓からテニスコートを眺めるが日課になってはや半年。

この一方通行すぎる恋心をどうすることもできずに今日も心の中で目一杯さけぶんだ。



「(大好き。)」



テレパシーなんかで伝わっちゃえばいいのにな。

そんで、宍戸もちょっとは私のこと意識しちゃえばいい。



「(無理だろうけど。)」



一人でそんなこと考えるのもいつの間にかまた日課のひとつ。

私の頭ん中は日に日に宍戸でいっぱいになってく。



「あ、」



気が付けばもうテニスコートは空っぽになっていた。



「帰るかー...。」



大きくひとつ伸びをして、隣に置いておいた自分のカバンを持った。



「...え、うそ。」



目を疑った。

体が固まった。



「(だって、こんなのってない。)」



振り向いた先に宍戸がいた。



「あ、わ、悪い!忘れ物、しちまってよ。驚かせるつもりはなかったんだ!」

「や、別に...!大丈夫!」



私、今どんな顔してる?髪の毛、変じゃないかな。

柄にもなく、さっと手ぐしで髪を整えてみちゃったりする。



「お前って、いっつも放課後教室にいるよな。」

「え、?」



そんな私のことなんて見向きもせずに、机の中を探りながら宍戸が呟いた。



「んで、いっつもテニスコートのほう見てるよな。」



ちょっと照れたように笑った宍戸にドキッとした。

心臓の音がどうしようもなくうるさい。



「誰か好きな奴でもいんのか?テニス部に。」



...あなたです。

なんて、死んでも言えるわけない。



「え...っと、その...」



言い訳を頭の中でぐるぐると考えた。



「(駄目だ、思いつかない...!)」



少しの沈黙が気まずい。

宍戸はそんなこと気にもしてないだろうけど...。



「お前さ、...」

「はいっ!?」



声が上ずった。

恥ずかしさで宍戸の顔が見れない。



「お前...けっこー可愛いって人気なんだぜ?テニス部ん中で。」

「え、?」

「忍足とか、マジで狙ってたりすんの。知らねーだろ?」



悪戯っぽく宍戸が笑った。

またドキッとした。




「(って、ちょっと待った。)」



そんな、うそな。

皆きっと目の病気だよ。

それともアレだ、常日頃からきれいなもの見すぎて美的感覚が狂っちゃったんだ。



「まあ...そんなだからよ、もしお前が見てる奴が...お、俺だったりしたらスゲー嬉しいんだけど...。」

「え...?」

「な、なんてな!気をつけて帰れよ!」

「(...耳まで真っ赤だ。)」



ちょっとは期待してもいいのかな?



(片恋同盟!)(にやけるのを抑えるのに精一杯。)





Back to main
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ