05/18の日記
22:47
ロンリー・キャット
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三叉路って知ってる?
道がYの字みたいに分かれている分岐点。
わたしは今そこに立っている。
頭の上にはナイフみたいな細い三日月が光ってる。
右?
左?
それとも、来た道を戻っちゃう?
どうしよう………。
だけど、
戻ったら待っているのは灰色の生活。
それにお母様は夕食会をすっぽかしたわたしをお許しにはならないだろう。
お父様も同じ。
またムチをお使いになるかもしれない。
小さいころからいいつけに従わないときにはいつもお父様に容赦なくぶたれてきた。
どうして?
わたしは本当にあの方たちの娘なのかしら?
そんなふうにずっと思ってきた。
お食事のときにスプーンを落としたくらいで、もうその夜はベッドに寝かせてなもらえなかった。
麦わら帽子を風で川に流してしまっただけで、髪の毛を短く切られてしまった。
ハサミを使いながらお母様は、
「花蓮ちゃんの髪は帽子と一緒に流してしまわなければなりません」
と言ったの。
嫌。嫌。
もう、あの家には帰りたくない。
この月光だけがたよりの暗い道の先に何があるかわからないけど、わたしは引き返さないわ。
そして、そして、お兄様のところに行くの。
ああ、ああ、お兄様。
一体、どこにいらっしゃるのかしら……。
わかっているのは画家の道を志して北のほうへ行かれたということだけ。
「花蓮。きっと迎えにくるからね。
それまで待っていておくれ」
って言い残して1年前、家を出ていかれてしまった。
だけど、
おととい、お兄様の部屋に残された日記を見つけてしまったから、わたしはもう我慢ができなくなってしまったのよ。
(つづく)
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