銀魂文

□甘味のせい(土銀と山崎+新八)
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その髪にも、その唇にも体にも、触るのは自分だけでいいだろ?



「…」

やられた。
まぁた、やられたよ。

銀時はチョコレートのストックを神楽に食べられた事を悟り、うな垂れる。
丁度通りかかった新八に彼女の居場所を尋ねるが、苦笑いで返された。
「最近神楽ちゃんは鉄砲ですよ、ああ、チョコですか、それなら」
そういって手渡された板チョコに、銀時は目を輝かせた。
「新ちゃん…」
「同じ所に隠すからですよ、なんか不安でしたから中から取っておきました、大事に食べてくださいね」
「…もっと取ればいいのに」
「…一つで十分です、あんた糖分取りすぎなんですから!」
「新八…もっと持ってるだろ」
「…」
何を嗅ぎ付けたのか、確信じみたようにそういった銀時に新八はため息を吐いて笑った。
「その執念には勝てませんねぇ、はい」
そう言って袋に入った10以上のチョコ系の菓子を目にして銀時は少しだけ新八の偉大さを知ったような気がした。
「新ちゃ〜ん!」
「ええい!!!抱きつくな!!!」
「これからも俺のお菓子と共によろしくな〜!!!」
「そ、それは宜しくお願いしますけど…く、苦じい…」
銀時の天然パーマならではのふさふさの感触が頬に当って新八はそれに苦笑いをする。
そんなにお菓子に愛の力を込めなくてもいいんじゃないのか?
ほら、確かもっとその力の篭った愛が欲しいとか思っている人がいたような気がするんだけど。
なんて、彼にとっては甘いものが無いと死活問題なのだろうと、ため息を吐いて玄関の方で物音がしたような気がしてそちらを向いた。そして、そのまま止まってしまった。
「ん?どしたの新八」
「銀さん、鬼が来ました」
「鬼、鬼に知り合いはいないが?」
「よお、坂田」
「あ」
声に人物の特定が出来て銀時は振り向く。
全身黒の隊服に身を包んだ長身の青年が腕組みをしていた。
その隣には部下で密偵の山崎。
「随分と仲良しだな」
「だって、新ちゃんは昔から大事な心の友だから」
「今突然そうなったんだろ、今」
ツッコミを入れる新八を一瞥した後、土方はタバコを咥えた。
その様子を一部始終見終わった後、銀時は新八に視線を移した。
「なあ、何で怒ってんの?」
「僕は知りません、てゆか分からないんですか?」
「わかりません」
そう答えた銀時の顔に、新八はこれは気付いているな、と眉を寄せた。
その顔に、銀時は背中が汗ばむような気がした。
何故そんなに鋭いかなこの子は。
「…そんな顔するなよ」
とりあえず声に出たその言葉を言うと、それくらいでは宥められない彼は、自分の考えは合っていたという様に詰め寄る。
「アレじゃ土方さん可哀想ですよ?」
「あのね新ちゃん、大人には大人の事情ってモノが」
「何が事情なんですか、子供に分かりやすく説明お願いします」
「新ちゃんいじめっ子だ…」
「苛めているのは銀さんです、たまには優しくしなくちゃダメですよ?」
「優しくて、そんなタマかよあれ」
「…おい、無視するな」
土方の低い声に気まずいような顔をした銀時は新八の頭を押さえた後、土方のほうを振り向いた。
「ああ、ごめんなさ〜い、本当、多串君て昔から存在感無かったヨネ」
「てめえ…斬られてぇのか」
「あああ、ちょっと落ち着いてください副長」
刀を抜こうとした土方を抑えて、今まで黙っていた山崎は新八を見る。
「新八君、ごめん、ちょっといい?」
「…はあ、銀さん仕事、忘れないで下さいね?」
「…30分後だよな?」
「いいえ、今からだと2時間ですよ」
「…意地悪だ、すっごく意地悪だ」
「本当、僕って実はSなのかなあ」
そう言いつつ無情にも去っていく新八を恨めしそうに見た後、銀時は土方を見上げた。
彼の目が、少しどころじゃない怒りを帯びているのが分かって銀時は頭を掻いた。
「ヤキモチ妬くなよ、新八は弟みたいなもんなんだって」
「妬いてねえよ、てゆか、お前から抱きついているから」
「?」
そう言ってそっぽを向いた土方に銀時は首をかしげた。

なんだ、まさか。

「…抱きついて欲しいのか〜?」
「当たり前だろが!!!お前は俺の恋人だろ!!!」
「恋人でも嫌なものと嫌でないものと」
「…嫌…なのか?」
「ああ」
土方が、そこにいるはずなのに、瞬間、物凄く沈んだような気がした。
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