銀魂文

□甘味のせい(山新Ver.)
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「土方さん、万事屋寄って行きませんか?」
「はあ?なんで?」
「いいですから、ちょっと用があって」
「…なんだ、沖田に難題でも出されたか?」
「違いますって、ちょっと、ほんのちょっとでいいですから」
両手を顔の前で合わせて、仕事に厳しい鬼の副長にお願いする。
この時間ならまだいる。
自分が調べた情報は間違いない。
黙っている土方に怒ったかもしれないなと、そろそろと顔をあげると、いつも通りのポーカーフェイス。
どういう返事を返してくるかと少し身構えると、見上げた先、土方はため息交じりに頷いた。
「仕方ない、少しだけだぞ」
「はい」

なんて、土方さんだってあの万事屋の主に会いたいくせに。

そう、思いながら、階段をあがる。
インターホンを押そうと思い手を伸ばした山崎を無視して、土方は扉を開ける。
それにツッコミをいれようと中に入ったところで、山崎は止まってしまった。
「…あ」

銀時が抱きついている。
新八に。

その構図に、横に立っている土方を見上げると、土方は涼しい顔をしながら煙草を咥える。
しかし、その行動は苛立ちを表すもの。
そして、苦笑いしていた新八がこちらに気付いて銀時の肩を叩いたようだった。
「おい、坂田」
「あ」
人物の特定が出来たらしい銀時が振り向くと同時に土方が口を開く。
「随分と仲良しだな」
「だって、新ちゃんは昔から大事な心の友だから」
「今突然そうなったんだろ、今」
新八が銀時の頭を引っ叩いた後、少し嫌そうな顔をする。
その顔の部類はあんまりかかわりたくないな、という感じのもの。
土方の妙な殺気を察知したのだろう。
同時に、銀時が何かを話し掛けて、新八はため息をついて対処する。
こそこそとエスカレートする会話に、土方が舌打ちをしたのがわかって、山崎は少し緊張した。
「…おい、無視するな」
土方の声と共に、銀時が振り向く、その後笑って新八の頭を押さえた。
「ああ、ごめんなさ〜い、本当、多串君て昔から存在感無かったヨネ」
「てめえ…斬られてぇのか」
「あああ、ちょっと落ち着いてください副長」
刀に手を掛けた土方にようやく止める事を思いついた山崎は少し重くなった腕を上げて彼を制止する。
同時に、刀を引っ込めた土方は山崎の足を軽く踏んだ。
その後、小さく、しっかりしやがれ、と聞こえて山崎は言うべき言葉を少しの間探して新八を見た。
「新八君、ごめん、ちょっといい?」
絞り出した声に、反応してこちらを向いた新八が頷いて、銀時をみてまた何かを言う。
それに何かを喚いている銀時の声など、山崎にはあまり聞こえていなかった。

★★★
「…すいませんねぇ、うちの上司あんなで」
「あはは、気にしてませんよ、えと、何してたんですかアレ」
いきなり、確信の質問。
どうしても、不安だけは取り除かなければならない。
その当然であろう質問に、新八はポケットからチョコレートを取り出す。
「銀さん甘い物好きだから、よくストックしてるんですけどね、神楽ちゃんが食べちゃうんです」
「へえ……は?」
「だから、いつも同じ所に隠してしまう銀さんのチョコ全滅を憂いて、僕がこうして取っておいたんですよ」
「はい」
「そしたら、銀さん喜んじゃって、テンション盛り上がるとあの人途端にあんな感じになるんです」
「はあ…な、なあんだ、そうかあ…」
良かった、それだけか。
山崎は胸を撫で下ろす。
「銀さん、お兄さんみたいな人ですから、あ、お兄さんていっても姉上の旦那にはなってほしくないですね」
「…ははは、でも言えてるねぇ、ちゃらんぽらん」
「そうそう、ちゃらんぽらん」
銀時のことをそう評して笑った二人は近くの公園のベンチに座った。
その後、自販機でお茶を買ってきた山崎に、それを受け取った新八は思い出したように聞いてくる。
「あ、そうそう、山崎さん、名前なんていうんですか?」
「…え、あ、退…」
「さがる、さんですか」
「うん、あ、名前で呼んで良いよ」

むしろ名前で呼んでください。
いや、名前でお願いします。

思い切り心の中でまくし立てて、山崎はきょとんとしている新八にやっぱりいいと言おうとして口を開いたが、その前に新八が嬉しそうに笑ったのを見て開いた口を閉じることが出来なくなった。
「いいんですか〜?じゃあ、退君」
「な、なに新八君!」
「あ、君じゃ駄目か」
「君で良いよ、君でっ!」
「じゃ、退君、好きな芸能人いますか?」
「確か、新八君はお通ちゃんだったね、俺は…あまり仕事多くてテレビとか見ないから」
「…ええ〜…じゃあ、お通ちゃんのCDとか聞いてみませんか?」
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