銀魂文

□雨宿り(土銀)
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「ったく…総悟のやろう」
「何で俺ん家なわけ?」
「雨なんだからいいだろ」
「なんだそりゃ」

勝手知ったる万事屋の戸をあけて勝手にソファに横になった土方は、これまた勝手に銀時の膝の上に頭を置いた。
それを勢い良く退けてから、銀時は向かいのソファに移動しようとして、土方の顔を見た。
「いいだろ……つか、いてっ、痛い」
「…怪我だな、もしかしなくても」
「あのなっ…傷口に爪を立てるやつなんか聞いたことな…」
「黙ってろ」
いつの間にやら薬箱を用意していたらしい銀時に、土方は取り敢えず黙る。
手際良く傷の手当をしていく銀時の手を見ながら、土方はそういえば器用な奴だったな、とぼんやりと考えていた。
「何があったんだよ」
「ああ、攘夷志士の鎮圧、怪我は総悟のせい」
「嘘だな」
「悪いな、嘘だ」
裂傷は言わずもがな、刀のもの。
沖田は土方に刀を向けても、傷をつけることはまず無い。
沖田は、強いが故の平和主義者なのだから。
そして、彼がもし、土方といたなら、土方に怪我などさせない。
単独で戦ったか、他に隊士がいたか。

そう思いながら、銀時は黙って、土方の傷を自分の目から見えなくするように包帯を巻いた。
「…よし、これでソファが汚れずに済む」
「…と…もう帰る」
「は?」
「銀時見たから帰る」
「…お前バカだろ」
「ああ」
少し笑いながら立ち上がった土方に銀時は眉を寄せたまま少し考えたあと呟く。
「雨、降ってる」
「何?」
土方が首を傾げながら振り返る。
「濡れるくらい別になんてこたねえよ、帰らなきゃ、近藤さん…あ、割と沖田も心配性だからな」
「ああ、そっか」
「…お前らしくない、どうした?」
「まあ、なんでもない、新八も神楽もいねえから銀さん寂しいの〜」
「ははは、餓鬼じゃあるまいし、じゃあな」

胸がざわつく。
どうしても、ここからこの存在を帰したくない。
素直に言えばいいんだろうけど、それは無理だから。

「包帯濡らすなよ、傷折角治療しといて」
「…」
「包帯代もバカにならねぇんだし、ちゃんと返せよ」
「…」

雨の音だけが響く。
銀時は黙り込んだ土方に気付いて首をかしげた。
「どうしたんだよ土方」
「…銀時」
ソファに座ったままの銀時を見下ろして、土方は動けなくなっていた。

一人にしたくないと、思ってしまった。

どこか放っとけとかそういう雰囲気を出している奴なのに。
だから、距離を置いて接してもなんとも無いのに。

「…もう少し、いてやるか」
「何それ、帰れよ、早く〜邪魔だ〜」
「銀時、はぐらかしてフワフワかわす方も好きだが、もう少し素直でも俺は好きだな」
「…」

銀時は、その言葉に目を泳がす。

今日は、どうやらあっちに分があるようだな。
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