銀魂文

□花花(近藤+土方+沖田)
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咲いた咲いた。
屯所の庭に花が。
咲いた咲いた。
赤白黄色。

ってな、へんてこりんな歌が聞こえるような気がする。

「…誰だ、こんなのどかな花なんざ植えたのは」


土方が人知れず呟く。
その真後ろで、沖田が呟いた。
「…俺ですが?」



お空に向けて、ビックリしたのか、なんなのか分からない叫び声が響く。

沖田を見下ろした土方は彼の肩を掴んだ。
「お前が?!お前が花を?!」
「…はい、何か?」
「いや、何って、なんでかな〜?とか」
「花は儚くそして弱い…ちょっとでも力を入れれば折れて、ちょっとでも水をやらなければ枯れ、そう、少し、少し間違ったら死んでしまう…あの花達の全ての命はこの俺の手の上で鎖に繋がれ、乗せられ踊らされているんでさぁ」
「何でもサディスティックに物を考えるな!」
「いや冗談ですぜ、男しかいない屯所ですからねィ、ちょっと癒しを…と」
「あそ」
冗談といった所で、どちらが本当の答えかは分からずじまいだが。
余り考えると本当に最初に言った事のような気がするので、土方は考えを引っ込めた。
「ご苦労だな、ここまでの花壇を作るとは」
「…作ったのは隊士ですが?」
「…隊長、もっとマシな事に隊士を使え」
「いやいや、農耕作業は修行になりますぜ〜」
土方のツッコミを笑い混じりの言葉で返した沖田は庭に出て行く。
私服の彼が花の前でしゃがんでいると、何故か腹黒魔王だということを忘れてしまうほど絵になる。
土方は縁側に座ってそれを眺めながら、煙草を咥えた。
「おお、花か、綺麗だなトシ!」
楽しそうな声が聞こえた。
相変わらず元気が良いなと、見上げた先にいた近藤の言葉に、土方は頷く。
「ああ、魔王が作ったにしては綺麗だ」
「ああ、そうだなって、え?トシ、魔王って誰だ?!」
「…可愛い魔王が作ったとさ」
「…ん?」
そう言って自分から視線を離して、前を見た土方に倣って近藤も前を見る。
視線の先に、枯れた花だけを摘み取ってバケツに入れる美青年。
日の光が強いな、と思いつつ、近藤は微笑んだ。
「総悟か」
「ああ、何を考えているのか、しかし、あの趣向には感謝だな」
「総悟、頭、何かかぶりなさい」
「え〜?ヅラかぶれって〜?まだ俺そんなに困ってませんぜ〜?」
「まったく、違うっての」
そういって、近藤も庭に出る。
土方はため息をついてそれを眺めると、吸い終わった煙草を潰した。


「どうしたんですかィ?」
「お前、日に焼けると可哀想なくらい赤くなるからな、ほら」
「わぶっ…」
近藤は自分を見上げて首を傾げた沖田に。自分の持っていたタオルを彼の頭にかぶせた。
沖田はそれを自分に合うように直すと、自分の横にしゃがんだ近藤を見る。
「ありがとうございます」
「綺麗なタオルだぞ、今から稽古で使おうと思ってたんだが…」
「じゃ、いいですよ?」
「ダメ、総悟が辛い思いをするなら、俺が汗疹だらけになった方がマシ」
「やだなあ、泣いちゃいますぜ〜?」
「ははは、そんな涙腺弱くないくせに」
「あははは、そうでした」
バシバシと叩き合っている二人に土方が近づく。
そのまま近藤に目掛けてタオルを投げた。
「いて!」
「バカか、お前も焼けるだろうが」
そういって自分もタオルを頭にかけたまま、土方は日差しの強さに舌打ちをした。
「あちぃな…おい、総悟、手ぇかけるなら夕方にしとけ、熱射病なんかになられたら困る」
「…もうちょっと、やったら終わりに」
「そうだぞ、総悟、もう終わりだ、立て」
「も〜二人ともほっといて下さいよ〜」
「ダメだ」
「そうそう、ダメだ」
両人とも腕組み。
沖田は少し気圧されて後退さり、それと共にバランスを崩して尻餅をついてしまった。
「…な、なに?なんなの?」
ちょっと怯えているらしい総悟に、近藤と土方は同時に笑った。
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