銀魂文

□近藤さん(土銀)
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どうして。
アンタの目の前で。
今こうして笑っている自分を見てくれない。
どこまでもどこまでも。
煩いんだよ。
その絆が。



「お前、近藤さん近藤さん煩い!」
「!!!」
「わっ!」
近藤本人の前で突然の言葉。
土方は近藤本人よりビックリしているらしく、固まってしまった。
銀時は俯いて、そのまま走り去ってしまった。

残された近藤と土方。
そして、余裕そうにシャボン玉を吹き出している沖田。

先程まで、何の変哲もない話をしていたはずなんだが。
いや、近藤近藤呼んでないんだけど。
なに、これなんなの?

「トシ、アイツ、どうしたの?俺悪いことしたか?」
「いえ、近藤さんは…別に、ああ、あいつ、甘いもの足りなかったんですよ多分」
「へぇ、それで片付けるか」
沖田の言葉に、土方は眉を寄せた。
途端に険悪なムードになる二人の様子を見てから、近藤は頭をかいた。
「…総悟、そんくらいで勘弁したれや、おい、トシ」
「何」
「行って来い、有休やるから」
「いりません、別に今アイツ追いかけてもどうなるわけでもない」
「…ああ、そお?」
土方の堅い声に、近藤はそれ以上の追及をやめる。
そして、先程の会話を反芻しながら自分の落ち度を探しているようだった。
土方はそれを見て、ため息をついた。
「だから、アンタは関係ないってんだろ」
「…あ、そうかあ?」
「そうそう、言葉も何にも関係ない、関係あるのは存在のデカさ」
「総悟!!!」
「俺、確かに図体はデカいけど…なんか邪魔だったか?」
「…だから!!!お前は関係ないって言ってんだよ!!!」

本日、同じ場所で、同じようなでかい声が響き渡った。


◆◆◆
「自己嫌悪だ」
「お前がか、珍しい」
「なあ、ヅラ、俺ダメかな」
「俺に聞くな、あ、オネーさ〜ん、いい男揃いだよ〜」
「ああら、自分で言っちゃうのぉ?綺麗なお兄〜さ〜ん」
変なやり取りが続く桂と女性客。
ほすとくらぶ。
なんかで何呼び込みしてんだか。
お前がホストになれば、即ナンバーワンだろナンバーワン。
軽く手に入る金なはずだがと、思い、桂を見上げると、ため息をついていた。
「…お前が辛気臭い顔をしているから女性が逃げてしまった」
「なあ」
「俺に幕府の芋侍な犬の話をするな、全く」
「…あらら、俺ってば聞く相手間違ってたか」
「そうだ」
それっきり、相手にしてくれない桂をつまらなそうに見上げて、銀時は立ち上がる。
途端に見下ろす形になった彼の頭をなんとなく叩いてから銀時はふらふらと歩き出すのだった。



お前近藤さん近藤さん煩い!



何を言ってんだ?
いきなり、出てきた言葉があれか?
子供っぽいほど、ちんけな独占欲って奴だよな。

だって、土方。

近藤さんって呼ぶとき。
楽しそうだから。


「…あれだよ、ほら、昔からの付き合いの親友戦友ってのは誰よりも絆が固いってのはわかってるけどさ」
自分に言い聞かせるように。
言ってみて、少し、辛くなる。
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