銀魂文

□ただ単に(土銀)
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泣くとかそういうの通り越した。
凄いなあ。
こういうの、初めてだ。





「よお、多串君」
「誰だよそれ、俺は土方だ」
「はいはい」

3言。

いつものやり取りだ。
慣れてしまえば苛々もないが。
そろそろ最初から呼んでくれまいか。
たまにそう思ったりしても、別に、それすらもどうでも良くなる。

出会えば、銀時は自分を意識するのだから。


原チャリにまたがって此方に手を上げる銀時を見て、その横で腕組みをしている警察を見る。そして、彼がちょっと前に起こしたのであろう違反を見抜く。
土方は仕方のない奴だな、と呟いて銀時の元に歩いた。

「何したんだよ、今度は」
「ええ〜と、スピード違反」
「おめーな原チャでそれやるか?」
「煩い、銀さんはジャンプの為に急がなきゃならなかった訳さ」
「ジャンプね、仕方のないやつだな本当に」
そういって、土方が銀時の免許証を見る。
横にいた交通課の警察が困惑した顔を作っていた。
相手は警察の中でも特殊で、優遇されている武装警察。
どちらかといえば土方のほうが格が上なのだろうか。
銀時は頭を掻きながら、土方の言葉を待つ。
「おいおい、免停じゃね?」
「うん〜そうそう」
「そうそうじゃねえよ、全くお前って奴は、手に負えないな…ほら、切っておけ」
「はい」
免許証を横にいた警察に手渡すと、土方はタバコを咥えた。
「あああ、土方くぅん!!!なんてことを!!!」
「ダメだ、法は曲げねぇ、お前も魂曲げねぇんだろ、しっかり教習を受けて来い」
「…ううう」
教習は別に良いんだろ。
要はもっと切実な問題だ。
「…おい、幾らになるんだ?」
「は、はい!…ええと…」
うな垂れる銀時を苦笑いで見ていた警官に土方が問う。
暫くやり取りをした後、土方はため息をついて銀時の頭を叩いた。
「いてっ」
「おい、後で何か寄こせよ?」
「へ?」
「いいんですか?土方副長」
「…ああ、構わない、他ならぬ“友人”だからな」
クスクス笑いながらそういった土方に、銀時は目を丸くする。
そして、注意事項と警告を受けたあと、銀時は去っていくパトカーを見送って隣の土方を見上げた。
「何?これ?」
「まあ、免停は免れないが、金はどうにかなったってことだな」
「…えええ…多串君が払ったの!!!」
「そういうことにしたんだ言うなよ、違反だからな」
「お、あ、ありがとう……はっ」
素直に例を言った瞬間。

何か寄こせよ。

その言葉を思い出した。
そして、それを思い出し、引きつった銀時を見て、土方が笑ったのだった。



「…何をあげればいいんだ?」
「何でも良い、その身体でもいい、むしろ寄こせ」
「それはダメの方向で」
「ちっ」
「…多串君はエッチだな…」
「若いからな」
「…はあ…」
あまりかわらんだろうが。
そうツッコミを入れておいて、銀時は腕組みをする。
自分にあげられるものなど何もない。
いや、身体はダメだから。
それは。
それはまだ。

まだ。
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