銀魂文
□大切なもの、帰る場所(山新)
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心臓が貫かれそうな感覚。
怖くて。怖くて。
本当に、怖くて。
その日。
珍しく自分一人で出来る仕事。
一人で大丈夫か?と再三心配された。
銀さんが行くほどのものでもない。
この界隈の地理に弱い神楽ちゃんに頼める事でもない。
自分で十分な届け物の仕事だった。
「ありがとう、誰にも見られなかったよね?」
「はい、大丈夫でしたけど」
「ありがとう、本当に、あ、これ御礼と、次のお届け物ね地図はこれ」
「ええ?は、はい…」
また届け物とは聞いていない。
そういう新八の顔に女性はその分の報酬ははずむわ、お願いとだけ言い残しそそくさと去っていった。
嫌なやりとり。
と新八は思いつつ、現金をそのまま受け取る。
結構重みがあるなあと、引きつったくらいの金の袋をかばんに入れた後。
少し中身が気になった届け物は綺麗な女の人の手に渡り、その後また渡された更に気になる届け物を手に新八は歩き出したのだった。
「こんなんでこのくらいって、まさかやばい代物じゃないよねこれ…」
銀時が、やばいと分かったら、引き受けない、あるいは自分に任せないはずだからとはいえ。
もし騙されているとしたら、やはり彼と来れば良かったのかも知れない。
知らずに帰りの道を早足で帰る新八は最後、走ってしまった。
「…万事屋になってからこういう緊張感よくあるなあ」
人通りの多い街中に出て、ホッと一息ついた新八は周りを見渡して一歩踏み出す。
しかし、その行く道が暗くなったのに気付いて驚いて顔を上げると、数人の天人が立っていた。
「あ、あのぅ…」
ああ、これもしかして。
「先程人間の女から預かったもの、出してもらおうか?」
ああ、しかもつけられてるし。
僕のバカ。
「届けものだからそうもいきません」
かばんを手に、後退って、新八は踵を返して走り出す。
確か、こういう場面も経験豊富になってるよな僕。
少し恐怖と一緒に客観的な考えが浮かんで新八はとりあえず天人にはない土地勘を最大限に使って逃げ回る。
自分は元々すばしっこい。
しかし、体力はといえばまあ、万事屋一番、ない。
新八はへばる前に、物陰に隠れる。
その後、やり過ごして、大きくため息を吐いたのだった。
「…も〜最悪…」
そういって、先程貰った地図を取り出す。
丁度近い。
新八はそれに感謝して先程の天人に見つからないように走り出したのだった。
「ありがとう、じゃあ、これ、報酬」
「…はあ」
「今度は追いかけられなかったようだね」
「え?」
「ちょっと様子を見てたんだけどね、慎重に頼むよ万事屋さん」
「はあ…」
なんか、自分って良いように使われた?
あ、でもいいかお金は貰ったんだし。
銀さんの所にいって早く安心させなきゃ。
凄く心配してたし。
ああ疲れた。