銀魂文

□怯えるな(土銀)
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空に手を延ばした。
太陽の光が、指をすり抜けてくる。
あの紅さ。

ああ、血が通っている。

自分は生きている。



ねえ、もう誰にも会えないと思ったら、そのとき、誰を一番最初に思い出す?






「…記憶喪失かあ」
「真っ白だったお前と少しだけ会ってみたかったな」
答えた横の黒ずくめ。
銀時は口を尖らした。


「ばか、おめ、そんな状態で会ったら…あえなく斬られるでしょ俺」
「おお、それ出来たな、惜しかったな、また飛ばしてみろよ記憶」
「ばかだな」


お前を忘れる事なんて。
そんな恐ろしい事出来るか。

知り合ってしまったのに。

忘れるのは、耐えられない。


そんな存在だと、


ああ、でも。

「もし記憶白くなったとして、俺、お前に…」
「ん?」
「惚れるかな?」
「当然だろ」
「…自信過剰じゃない?」
「阿呆、自信を持つ俺だからこそ、お前は惚れるんだ」
「…あ…そう」



黒い髪の間で、瞳孔の開き気味の鋭い瞳が細められる。
そして、そのまま伏せる。

このまま覗き込めばきっと、その目は閉じられる。

「…なあ、土方」
「ん?」

覗き込むと、口元に笑みを浮かべながら目を閉じた。


ほら、当り。


何で目を合わせないか知っているよ、俺。


「頼むから、その想像力を消してくれ」

銀時がそういうと、土方はクスクス笑い始めた。

ああ、バレていたか、と。

「お前に忘れられたら…耐えられんな」
「…あらら、同感、可愛いねえ…」
「でも、覚えてなきゃ、本当に斬るぞ」
「怖いなあ…でも、無理よ多分、俺、桂も忘れてたらしいし」
「マジでか、望み薄いなそれだと」
「だねえ…」
「…忘れる…お前が、俺を」
「…だから、もう、これは例え話にしてよ」

ダメだな。
例え話をしても、今の彼には通じない。
なにせ身近で一番大事な人間が一度、彼を忘れているのだから。
俺が忘れるより忘れちゃダメなのに。

馬鹿なゴリラめ。



お前のせいで、俺の大切な彼が、こんなに不安がっている。
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