銀魂文

□天―七夕@(沖+神)
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別にあの星の群れは結構年に何度でも現れる。
でも、この日であれば、なんだか、少しロマンチックじゃないか。

なんて、そんなことを考えて。

☆☆☆
「銀ちゃん、今日はどっかの気の長い恋人同士が待ち合わせしている日なんだって、でも午後から雨降るから無理だって、姐御が言ってたアル、てことは遂に破局アルか?」
膝に乗っかってきた神楽がそう言って目を輝かせる。
破局がそんなにいいのか、お前、とツッコミ入れかけて、気分的に銀時は答えを変える。
「そうか…いや、破局にはならないんじゃない?気が長いんだし」
「なんだ…そうアルか」
銀時の穏やかなツッコミにつまらなそうな顔をした神楽が膨れると、台所から昼ご飯を作って持ってきた新八がカレンダーを見て、どんな話をしていたかを大体察して笑った。
「それって、織姫と彦星の話?」
新八が昼ご飯のカツ丼を並べて行くのを二人で少し目を輝かせてみた後、神楽が新八の言葉に頷く。
「そうアル、織姫と彦星が力を合わせて悪のエイリアン伯爵とバトルを繰り広げたけど、その途中エイリアン伯爵の飼ってた白鳥の群れが檻から逃げ出して、檻に閉じ込められてた腹いせに一斉にウンコして…ソレが大洪水になってエイリアン伯爵を飲み込んで、更に、織姫と彦星の間を引裂いたネ、二人は余りの臭さになかなか渡れないけど、一年に一度だけウンコが一気に全面凍結するアル!でも、その日に雨が降ったら凍らないから…」
「うわばばば、どっから突っ込めば…って神楽ちゃん、それ面白いけど全然違うから、その織女と牽牛の話は古くは中国に伝わる伝承の話だから、もっと綺麗だって!姉上に騙されてるんだって!」
「…マジでか!!!」
神楽が目を丸くするのを見て新八は苦笑いする。
後で、自分の姉を叱り付けることにして、彼女の横で話をメモる銀時を見る。
「銀さん、メモらないで下さい」
「え、多串君に聞かせようと…」
「あの人はそんな汚い話は喜ばねぇだろが!!!アンタぐらいだよそんなん喜ぶの!!!」
「し、失礼な、別に俺は汚い話なんか聞いて喜んでないよ!!!」
「…たく…ああ、どうぞカツ丼冷めちゃいますから」
「ショックアルー…」
「神楽、後でもう1回聞かせて」
「解ったアル〜!」
「ああ、土方さん可哀想…」
二人が汚い話でヒートアップする前に、新八は冷蔵庫から作っておいたゼリーを取り出す。
それに二人は一斉に振り向いた。
デザートに弱い。
それを見越した攻撃が功を奏して新八は満足そうに笑った。
「おお、なにそれなにそれ」
「生クリーム〜!!!中に入ってる星型のこれ何?ハートもあるネ!!!」
「中に入っているのはイチゴのチーズと、ブルベリーのチーズと、あと果物かな」
「…おいしそうアル!食べていいの?!」
「食べる為に作ったんだよ?どうぞ」
光を通してキラキラ輝くゼリーを手に、その前に手を洗うように言いつけて、新八は先程銀時が書き物をしていた紙を手にとって見る。
さっきの恐ろしい捏造話が延々と書かれているのかと思いきや。

そこにはただ“晴れないかな”とだけ書いてあった。

「…わりと可愛い人なんだよね…あの人…」
きっと、さっきの話など、既に頭の中に入っているのだろう。あれで頭の回転は早い。
今日、彼は仕事のほかにスケジュールをとっている。
それは、私用を忘れないように、銀時が専用に付けているカレンダー。
最近気付いたけど、何も、書いていないのに印がついている日は。

多串君=土方さん…に会う日。

「七夕デートなんて、ロマンチックにも程があるけど、ああ、僕も人の事言えないか」
と、自分の部屋のカレンダーを思い出し、笑いながら後ろからの足音に気付いて新八はメモをソファの上に戻す。
二人が少し小走りにカツ丼に飛びつくのを見てから新八も自分の分のカツ丼を口にしたのだった。






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