銀魂文

□天-七夕A(山新)
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「今日は思いがけなく楽しかったね」
「うん」
屯所を抜け出したのは、出来上がった笹飾りを満足そうに眺める土方と銀時、その下で喧嘩している沖田と神楽を見た後。
余り遅くならないようにな、と近藤が言っていたのを思い出す。
雨が降っている中、二人は何故か出掛けてしまった。
なんとなく、邪魔が入らないようにするためだと、本当になんとなく二人とも出掛ける支度をしたのだ。
今思うと少し恥ずかしい。

「ね、ねえ新八君」
「あ、退君!どうせならなんか建物入ろう!」
「う、うん…」
何気なく肩に手を置こうとして、しかし遮るように振り向いた新八が指差すデパートを見て、曖昧に頷いた山崎はそこに入る。
周りを見ると、結構人の姿もまばら。
平日でしかも雨なのだ。
仕方あるまい。

傘の窮屈さから解放された山崎が背伸びをするのを遠巻きに見て、新八は今更ながら彼がオフだったことに気付く。
そういえば、制服を着ていたのは近藤と沖田だけ。

もしかして。
自分がくると思って有給でもとってくれたのか。

「なんて、そんなわけ」
「どうしたの?」
「うわっ、な、なんでもないです!」
「そう?」

顔を近づけられて、新八は突如心拍数が上がったのを悟られまいと、目に入ったゲームコーナーを指差した。
「ええと〜…」
「あ、ゲーム?いいね、俺結構上手いよ〜?」
「本当ですか?」
「あ、疑ったね?これでもゲームでは真選組で叶う相手は居ないよ」
とはいえ、真選組でゲームをやる人間など一握りだがな。
そう自分に突っ込みを入れつつ、新八について中に入る。
「なにこれ…なんか真選組格闘ゲームってのがありますよ」
「………えええええ!!!」
入った時点で恐ろしい単語が聞こえて山崎は新八の声の方向に走る。
既に何人かの女の子がたむろしているそれを覗き込んで、山崎はその内部で動くキャラクターの癖を見て青ざめる。
余りに精巧だ。
余りに台詞まで精巧だ。
声の複製をどうやってやったんだ。
声?
声まで入っている…。
ま、まさか、もう想像しなくても奴しか居まい。
「…松平さんだ、多分あの親父に決まっている、あの野郎…はやく副長に報告しなくちゃ、儲けるつもりだ、あの野郎は俺らで儲けるつもりだ…」
「…あ、はははは…」
そう、女の子のウケが良いのが目に付くようになった真選組の今日この頃。
あの私利私欲親父が何もしないわけは無い。
畜生、キャバクラで知り合った巫女の女のせいだ。
調べは付いている。
きっとその資金だ。



…。

でも面白そう…。



「…ま、まあ1回やってみようかな」
興味をそそられたのは山崎でなくとも新八も同じだったらしく、山崎の言った台詞に目が輝いたようだった。
「そうですよ!一回くらいならきっと土方さんも目を瞑りますって」
「そうだね、1回やってみて、余りにヤバイものだったらもう、ね……」
そう言って山崎は空いた筐体の前に座る。
キャラクター画面。
その中には真選組の隊長クラス、と何故か山崎。
そして、敵方には攘夷志士に…万事屋一派。


「えええええええ!!!」


二人が声を上げる。
「銀さん、銀さんいますよ銀さん!!!うっわ画面の中でも目が死んでる」
「新八君もいるよ、あ、神楽ちゃんまでも」
「…マジですか…」
「あの親父は…」

二人が殺意に芽生える。
取り敢えず、山崎は土方を選ぶ事にした。
「これが如実に自分らを語っているのであれば、俺は性能性としては絶対打撃面が弱いから、総合でバランスの良いい土方さんなら使い易いはずだ、あ、使うとか言っちゃった」
「へえ…退君て、意外にマニアックな事言うね」
「いいじゃん〜二人ともマニアックなんだし」
「つまり、お、お似合いってことですよね」
新八に小さく言われた言葉に、山崎が少し赤くなった瞬間に画面内で戦いが始まる。
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