銀魂文

□パフェ日和(近+銀+土)
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「…うわ、あちぃ…」
朝から燦燦と照りつける太陽。
眩しいその光に目を細めた後、近藤は後ろで暑いだのなんだの騒いでいる隊士を笑って見た後に出掛ける。

誰にも言わずに出たがまあ、いいだろう。
帰ってトシが叱ったら素直に謝るしかないけど。
今戻ると多分もう外に出たくなくなる。


どこに行こうか。
お妙さん…って気分でもない。


隊服なのだ、見回り的なことをしていれば良いだろう。
普通、局長である自分がそういうことなどしなくてもよいのだが。
ずっと屯所に篭るのも自分的には性に合わない。
何かあったときのためにそれでもいるわけなのだが。
こっそり、こうやって出たりする事も。
その度に、トシに叱られているが。
まず、自分が出れば、彼がなんとかしてくれるのだ。
甘えすぎだな。

「そだな、迷惑はいかんか」

昼には戻ろう。
昼くらいまでならあいつもなんとか許してくれるだろう。
戯れた言葉すらも交わせないほど怒らせるのは避けたい。

最近は特に攘夷志士が苛立っている。
一番危ないのは自分と副長のトシ。
どちらかといえば、指揮系統を全部司る彼のほうが危ないだろう。
そんな事を知っていつつも、彼に全てを任せている。
このままではいけないような気もしている。
等々考えて、そう本人に言っても、コレが自分の仕事、これ以外に役に立たんから仕事を取るなと笑って返されて終わり。
まあ敵の裏をかくような作戦などを立てられるほどに頭の回る彼の代わりなど自分に出来ようはずもない。
だからこそ、副長であるのだ。
「本当、頼ってばっかりだよな」
律する必要性を感じるが、彼なくしてここまでの組織は有り得ない。

と、考えているうちに自然に足が向いたのか、歌舞伎町に到着。
しかし、別に妙のところに行く気も起きずにぶらぶらと歩いていると、肩を叩かれた。



「よ、ゴリラ」
「!!!」
背後を取られたのが少しショック。
同時に、不躾な呼び方をされて、肩を叩かれたのだ自分のことだろうと不本意ながら近藤は振り返る。
間延びした気抜けを起こさせる声で人物は大体特定される。
まあ、彼になら背後を取られても仕方はあるまい。
「俺は近藤なんだけど?」
「あいあい〜近藤さんおはよう〜今日は暑いねダルダルだね〜」
「あいあい〜銀ちゃんおはよう〜お前は毎日ダルダルだね〜…」
あいあいって何?
と、思いつつ言葉を合わせてみてから、目の前に現れた丁度土方と同じくらいの背の銀時を見下ろす。
寝坊が常の彼にしては、今日は珍しいほど早起きらしく、寝ぼけ眼…なのかなんなのか取り敢えず目は死んでいる。
暑さもあるだろうが、そんなぼんやりした彼に見上げられて、少し気の抜けた近藤は苦笑いをした。
余り話をする気も起きないと、近藤は適当にあしらって彼から離れようとしたが、途端に腕を掴まれた。
「ななな、何!」
「…近藤さ〜ん!腹へった〜俺何も食ってないんだよ大食い神楽のせいでさ〜もう餓死する〜」
「はあ?」
遠まわしでもなんでもなく。
思い切り彼の言葉の表に出ているのは「奢れ」というもの。
近藤は、余りにもハッキリしたそれに、怒るどころか逆に笑った。
自分にこういう言い方をしてくる奴って初めてだ。
「全く仕方ねぇな、何食うんだ?」
「え?いいの?!」
「なんだ?食わないのか?」
「食う食う!!!」
承諾するというのは予想外だったのか、一度驚いてから途端に目が輝く銀時。
初めて見たぞ、いざとなったら煌く目…って、食うときかよ。
割とこうなると美形に見えようものだが。
何故にあんなに締りの無い顔ばかりするんだか。
しかし、銀時の喜びに満ちた顔を見て、そういう考えをどこかに放り投げ、近藤は彼を促して歩き出す。
「も〜ゴリラ大好き!大好きゴリラ!」
「感謝するなら近藤と呼べ近藤と」
「あ、ああ、まあ、あ…りがとな、近藤さん」
「…」
歯切れの悪い言い方に振り向くと少しだけ頬が赤くなっている銀時が視界に入る。
近藤は珍しいその様子に少し見入ってから、笑いを浮かべた。

そうか。
照れ屋さんなんだなコイツ。
ああ、似てる。
そうだちょっと似ているぞ、こいつ。
アイツよりは変化球で捻くれてて回りくどくくるけど似ている。
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