銀魂文

□兎角動かされがち(土←沖)
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何も言わなくなった近藤に怒ったのかと少し怯むと、肩を掴まれた。
そのまま引き寄せられると、がっしりと背中を抱きしめられた。
「どうした、いきなり子供にでもなったか?」
「男ってないつでも少年ですぜィ」
「そんな、銀時みたいなことを言うなっつの」
「…坂田の旦那のこと、近藤さんはどう思ってます?」


浄も不浄も超えた別のところで戦っているような。


って、聞いたような、聞かなかったような。
抱っこされた状態で、沖田は近藤の肩口に顔を埋めて返事を待つ。
暫く、何も言わない彼に、沖田は不安になって催促するように近藤の背中を軽く叩いた。
それに反応したように近藤は口を開いた。
「わからねえよ、ただ、妙に人の心を掴むやつではあるな」
「…」
「トシが、好みそうなタイプだよ、本当に」
「…どうするんですかィ?取られますぜ、副長」
彼に問うたようで、実は自分に問う。
胸の鼓動が早い。
どうしよう、近藤さんがもし、消極的意見なんか言ったら。
俺は、あなたの言葉を信じてしまう。
だって、土方さんの一番の理解者なんだから。

思わず近藤の服のスカーフを握ると、勘違いしたのか近藤は急かすなと頭を撫でる。
そして、その後クスクス笑うと、優しく背中を叩いた後に、笑い混じりで言葉を紡いだ。
「トシは、俺を絶対に裏切らねぇ、銀時くらいで揺らぐほど、俺ら真選組は浅い絆じゃない」
「…」

言い切りやがった。

そう思って、彼の肩から顔を離すと、真正面から覗き込む。
「どこから自信が来るんですか?!」
「総悟、お前は可愛いやつだ〜」
「何!!!何ですか!!!い、痛い痛い痛い」
「はははは」
頭をぐしゃぐしゃに撫でられて総悟は彼の言わんとすることが分からずにムッとしながら抵抗する。
でもそれ以上に安心してしまった。


彼が言うなら。

土方が信頼している彼が言うなら。



近藤は少し、頭を撫でる手を緩めてやる。
昔から、こいつはトシが大好きだったから、最近、不安でならなかったのだろうか。
確かに、銀時は面白くて、いいやつだし、俺も嫌いじゃない、むしろ好きかもしれないが。
トシが、彼ばかりを追うことはないだろう。
伊達に昔からアイツと幼馴染をやっているわけではない。

分かる。

全然心配ない。

心配するだけ無駄だ。


「うわっ!!!」
「…あ、土方さん」
「なにしてんすか?!」
「おお、コミュニケーションてぇやつ、プロレスだプロレス」
「そ、そうですぜィ、さっき二人でプロレス観戦してたんでさぁ」
ヘッドロックをかけている沖田の様子を暫く見た後土方は苦笑いをする。
「どうした総悟、涙目だぞ」
「へ?」
「おお、トシ良くぞ気付いた、さっき俺のコブラツイストが炸裂してな!」
「はあ?コブラツイストぉ?なんだそれぇ?!」
「あ、あれ?土方さん知らないんですかィ?」
近藤のはぐらかしで見事泣いていたことを隠してもらった総悟は土方が分からないといったコブラツイストをここぞとばかりに彼に決める。
「いだだだだだ!!!!」
「ははははは、痛いか、へし折ってやりますぜ!」
「わかった、わかったから、総悟、ギブ、ギブギブ!!!」
土方の喚き声を聞いた近藤は総悟を見る。
総悟といえば、いつもの愉快犯な表情に戻っていた。
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