銀魂文

□雨宿り(土銀)
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「…トシ、いるなら座れよ」
「ああ」
ようやく出た、可愛げのない台詞を聞いて土方は銀時の横に腰掛ける。
腰掛けた途端にその肩に重みを感じた。
首にくすぐったい感触を覚えて見ると、銀色の髪が見えた。
「怪我、して、ココに来るな」
「…」
「…それだけ」

失うのは怖い。
背中とか、肩が一気に軽くなるのは嫌だ。
神楽は強いし。
新八は危険な事はあまりしない堅実なやつだからいい。
でも。
土方は。

「…ゴリラ、お前一人に見回りさせんの?」
「いや、違う違う、近藤さんは俺の事を一人で見回りなんか絶対にさせない」
「じゃ、何で」
「全く、素直も考えものだ」
「何で、何でって聞いてる」

頑なに聞いてくる銀時の声は、いつもの間の抜けたようなものとは違うもの。
意外と、こういう声もいいな。
そう思いつつ、銀時の言葉に答えを出す。
「ちょっと、今日はな、はめられた」
「…」
「隊士の命が助かったのはいいけどな、俺が怪我する羽目になっちまった、全く情けねぇ」
「…」
「だから、帰りが遅いと、近藤さんが心配しているかもしれないから、早々に帰ることにしたんだ」
「俺の顔だけ見てか」
「…悪いな、余計な事を考えさせたみたいだ」
「あのな、お前、俺のなんか勘違いしてる」
「?」
「お前、俺を勘違いしてる」
「おい?」
「勘違いしすぎなんだよ、コノヤロー」
その言葉と同時に足を踏まれて土方は銀時の肩に腕を回した。
「勘違いって?」
「…一生違ってろ」
「銀時、って、うわ」

苛々する。

苛々しすぎて、どうしたらいいか分からなくなる。

土方をソファに押し倒して、銀時は彼の上に乗ったまま彼を見下ろす。
見下ろす銀時の無表情さに、土方は少し寒気を感じた。
だが、気圧されるのは癪に障るような気がして彼と同じく無表情で返すと、銀時は静かに包帯の上から傷を触ってくるのがわかった。それに少し痛みが走って土方が眉を寄せると、その顔をみてから、銀時は彼の上から降りた。
そのまま、ソファからも降りると、土方を振り向いた。
そして、いつもの、表情を作る。

そのいつもの表情が、痛いくらい土方の胸を刺した。

「帰れよ、もう邪魔だから」
「…」
「も〜早く帰ってこねーかな皆」
背中を向けた銀時に、土方は目を瞑る。
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