銀魂文

□近藤さん(土銀)
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トシも。
そうなんだ。
きっとそうだから、この人ばっかり。
ムカつく。
分かるから。
余計ムカつく。
「…おいおい、睨むな」
「…煩い、お前がいなきゃいいのに」
「…あ〜はいはい、じゃあ消えるよ」
「…居ろよ」
「ん?」
「お前でもいいや、居てくれ」
「そうか」

近藤は笑って空を見上げながら背伸びをしたようだった。



昔一度だけでも独りになったのは、遠い前の話に思える
今はまた、重いのに、背負った仲間や、いつの間にか周りに皆がいて。
けど。
いつか、また、もう一度独りきりになったら。
自分はどうなるんだろう。


考えが暗くなるのが嫌で、近藤の隣に寝転がる。
草が風にそよぐ音がする。
こんなに綺麗な音なんだな草の音。



「何やってんだよ、お前ら」
「あ〜トシだ〜」
「トシ〜」
目の前に現れた土方に近藤と銀時は間延びした声を上げた。
その後、ため息をついた土方がしゃがみこむのと近藤が立ち上がるのは同時だった。
「近藤さん?」
「トシ、俺は戻るわ、またな銀時」
「ああ、またな、ゴリさん」
「だから、近藤だってばさ」
「はいはい〜」
同時に笑いながら。
二人の距離は離れた。
土方は横からそれを見て、目を細めたようだった。
「なんで、近藤さんと仲良くなってるんだよ」
「トシには内緒」
「あのな…」

言葉が出なくなる。

初めて見る表情だ。


寂しげな。
綺麗な。
顔。


「…ごめん、今日は」


なんだよ、お前って、自分が90%悪くても、残りの10%に全身全霊かけて謝らないタイプだろ。


そう言おうとして、土方は言葉を引っ込めた。

その代わりに、銀時の肩を引き寄せる。
自分の胸の辺りに、彼の顔が当るように、そっと抱きしめると銀時は何も言わないままでため息をついたようだった。
何を言おうか迷って、土方は彼の流れの少し緩やかな川に入った日焼けをしていない白い足を見る。
そして、それが水を受ける様子に、自然と言葉が生まれた。
「足、冷えるんじゃないか?」
「気持ち良いんだ、これ」
「…そっか」
「トシ…」
強い力を背中に感じる。
抱きつく力というか、縋りつく力。
見えない表情に、それを気にしようとして土方は断念する。
銀色の髪が風に揺れる。
それに唇を寄せてキスを落とした後、銀時の体を少し強く抱きしめて呟くように語り掛けた。
「好きだ」
「なに、言ってんの?」
「ただ、あんまり言ってないから言いたかっただけだ、恥ずかしいんだぞ、宝にすると良い」
「ああ、トシ、俺も好きだよ」
「…」
「国宝級だろ?大切に保管しろ、厳重に、魂の奥深くに」
「…ああ、本当だ」
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