銀魂文

□大切なもの、帰る場所(山新)
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そう思って、新八が帰路について、少し経った後、直ぐに口を塞がれて近くの茂みに引きずりこまれた。
驚いた新八はその指を引っかくが、小さく静かにといわれた言葉に動きを止めた。
そして、声の主を特定して、更に驚いて振り向いた。
「ええ?退君?!」
「ちょっと、新八君!なんでこんなところにいるの?!」
小さな声で言われ、彼が隊服を着ていることに仕事中と悟り、新八も声を潜めた。
「こ、こんなところ?」
「ココは危険なんだよ?迷い込んだの?」
「違うよ、ちょっと万事屋の仕事で…」
「君が?!なんでこんな所に…坂田さんじゃないの?!」
声は小さいものの、少し怒ったように声を荒上げた山崎に新八は身を縮めた。
それに気付いて口を塞ぐと、山崎は咳払いをした。
「いいよ、まあ、俺が気付いてよかった」
「…?」
「今、ココに過激派の攘夷浪士組が潜んでいるって…」
そこまで言って少し身をかがめた山崎に合わせて新八も身をかがませる。
「だから………ねえ、新八君…まさか、何かもってきたの?」
「はい、何かやばいものかもしれないってのは途中で天人に囲まれたから思ったけど…」
「…」
頬を掻きながらそう言った新八に山崎の顔が険しくなる。
もうかばんの中身は貰った報酬の現金だけ。
そこで関係は切れいている。
そうとはいえ。
「坂田さん、何で君を」
「いや、最初は歌舞伎町だけだったんだけど、頼まれちゃって」
「ちゃって…じゃなくて!…ああ、とにかく無事で何より…っと」
携帯がなったのか、山崎がそれを取る。
耳に当てた部分から、多分指示を出している人、恐らくは土方辺りだろうか、その声が聞こえる。
「ええ、なんでも頼まれたらしくて」
「?」
自分の事を差す口ぶりだなと聞いていると、少し大きな声が受話部分から聞こえた。
「ええ、わかってます、ヘマはしませんから」
「…」

横顔が。
いつも会う山崎という人と違う気がした。
いつもやんわりしているのに。
全く持って別人だ。


「新八君」
「あ、はい?」
「ちょっと帰り遅くなるかもしれないけどいい?」
「…は、はい」
「電話しておく?」
「あ、はい」
そういって携帯を受け取った新八は電話を掛ける。
電話に出たキャサリンに遅くなると告げて欲しいというと、彼女かとからかってくる。
少し緊張感を抜いて話をした後に通話を切ると、山崎に携帯を返す。
「ごめん、混乱してる?」
「はい、ちょっと」
「掻い摘んで説明ね、俺、いま言ったとおり過激派の攘夷浪士を調べてるんだけどね」
監察、つまり密偵という仕事はそういうものなんだよ。
というのは確か聞いている。
最初の下調べ等々。
大体が土方の命令で動く彼の能力は、第一印象や一緒に居るだけでは判断しづらいほど高い。
「君が来て驚いたよ、目の前通っていくんだもん」
「あ、えと」
「このままこの道行ってたら死んでいたかもしれないよ、危険だと思ったらその時点で坂田さんと行動しなよ」
「…天人に追いかけられてそうもいかなかったから…」
「…天人…ふうん…そっか関連してたのか」
いつもより声が堅い。
常に緊張している所に自分が入ったことが更に彼を緊張させてしまっているのだろう。
彼ら真選組から見れば自分は本当に一般人だ。
少し刀が使えるくらいでは彼ら特殊警察にとっては赤子のようなもの。
せめて銀時ぐらい強ければ。
とは思いつつあんなに強くはなれないなとぼんやり思っていると、山崎が舌打ちをする。
「やばいなあ、早く来ないかな副長達」
「…?」
「確信ついたから連絡したはいいけど、多すぎる」
「…」
「新八君、いよいよになったら、逃げ足最大限に使ってね」
「う、うん」
茂みに隠れたまま。
恐らくは、この状態が長く続く事はありえないと判断したのだろう。


山崎は言わないが。
恐らくは自分のせいだ。
山崎一人ならもうとっくにココから出ている。


怖い。
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