銀魂文

□大切なもの、帰る場所(山新)
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「50…から70人…ここまで集まるなんて、やっぱり天人が焦るわけか」
「…」
「どのくらいの武装をしているのか、そこまで分かれば攻撃もしやすいけど…」
「山崎さん…」
「あ、大丈夫大丈…」
引きつった笑いを自分に見せた時、二人に向けて光が当る。
「誰だ!!!」
「やばっ!!!新八君!!!」
見つかったと即座に二人とも判断して緊張が走る。
同時に、山崎が声を上げて、新八の手を取ってそれを引く。
走り出した直後に新八の後ろから山崎も出る。
「絶対振り向くな!!!」
「はい!!!」
聞いた事もないキツイ言葉を耳に、新八が走りながら後ろで何度か鳴る金属音に気付く。
「…山崎さ…」
その音に幾らなんでも振り向けずにいられなくなった新八が山崎のいる方向を振り向いた瞬間。


目の前に鮮やかな赤が舞った。


「!!!や、山崎さん!!!」
「…っ…!!!だから!!!振り向くなっての!!!」
一人二人倒れているその前に山崎。
だが、血が出ているのは相手だけではない。
腕の辺りが血塗れの山崎に足が動かなくなった時、後ろから衝撃波のように風が鳴り響いた。
その轟音に、真選組の持つバズーカなのだろうと気付いた新八は山崎を見る。
「遅いっつの」
「あ…」
血塗れ。
返り血もあるが、それ以上に、彼の血を大量に出している肩に負った裂傷に新八は声が出なくなる。
「行くよ、こっちこっち」
呆然としている新八の手を引いて、止まることのない血を押さえながら走る山崎に向って隊士が集まってくる。
「…大丈夫か!!!」
「はい、なんとか、民間人も無事です」
「…志村君?!」
沖田の声が響いて、土方が振り向く。
彼はいつも、目つきは悪いが。
それ以上に突き刺さるような気がして新八は俯いたのだった。

◆◆◆
「無事制圧とはいえ、お前が怪我するとは痛手だな」
「あはは…」
「大丈夫か、動かせるか?」
「暫くはちょっと、すいません迷惑掛けて」
「なんだそんなこと、お前の働きから考えればなんでもねえ…新八君は大丈夫か」
「あ、はい…」
真選組屯所に戻ってすぐ、局長である近藤の出迎えを受ける。
事前に土方の報告を受けて山崎の怪我を心配していたようだった。
本格的に治療が始まると、明るい下に出た真新しい、腕についた流石に生々しい傷がその深さを思い知らせてくる。
新八は見ていられなくなって部屋を後にしてしまった。
「…副長」
新八が出て行った後、山崎が土方を見上げる。
それに気付いて、見下ろしてくる彼に、山崎は苦笑いをした。
「…あまり睨まんでくださいよ、アンタの視線になれてない子なんだから」
「…うるせーな…それより大丈夫か?」
「すいません、あんまり深入りするなって言われてたのに」
「そうだ、反省しろ、お前の代わりはそうはいないんだからな」
「はい」
頭を叩かれてそこをさすりながら、土方の後姿を見送って山崎は、体こそ無事だが心を傷付けてしまった新八を心配する。
目を伏せた山崎を見て、近藤は目を細めた。
「治療終ったら、新八君呼んでくるからな」
「え、えと」
「こういう風に、危険な仕事をしているんだ、時間は大事に使え」
「…」
「明日から傷口がふさがるまで休め、命令だぞ」
「はい」
「あと、本当に無事でよかった…トシもああいうが心配してたんだからな、ほら恥ずかしがり屋さんだからアイツ」
「ははは」
「おーい、近藤さん…?」
「げ、やべ、じゃ、じゃな」
戸の外にいたらしい土方の低い声と、近藤の少し上ずった声が合わさり、慌てて去って行った近藤を笑って見送って、山崎は綺麗な包帯で巻かれた肩を見る。


新八のあんなに怖がってる顔をみたことがない。
でも、あの時はああするしかなかった。
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