銀魂文

□髪1(土銀)
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「!」
「いっからさ、もういいじゃん、あの人はさ」
「はい?」
「…」

銀時の様子も全く読めない。

と思ったのは数秒間だけだった。


「…銀時」
「…」

どちらからとも無く唇を合わせる。
口紅の味がする。
土方はそれに笑った後、唇を離して、それを少しふき取る。
「ん〜…なにぃ?」
「口の感触が鈍る、口紅は好きじゃねえ…」
「…」
「そう潤んだ目で見るなよ、何?惚れたか俺に」
「ま、少し惚れ直したかも」
「…銀時、もう1回言え、もっと良い言い方で」
「…」



昔の、土方。
もっと前に会っていたら、こんな関係になったかな?
分からないな。
昔からなら、もっと素直に、愛したかもしれない。
あ、もしかして、昔から会ってたら自分は、ずっとでも、ここにいたいと願ったかもしれない。

でも、自分には似合わないかぁ、真選組って。

「惚れたよ、うん…好きだ」

じっくり考えたあと、そう答える。
土方はそれを聞いて、嬉しそうに笑った。

その、格好で笑うか?

ダメだよ、もっともっと好きになる。





昔は髪が長かったんだよ。

そういった彼に、自分はそれを想像して、ちょっと見てみたくなっただけの話。

見て、どうなるか、自分でも分からずに。


分かっていたら止めてたよ。




どこかに、捨てたはずなのに、まだ初々しい恋心がこの魂の中にはあるんだな。





「…こんなん言わせんな、恥ずかしい…」
「パー子の格好で何言ってんだよ」
「…へへ、そだな…」
「どうしよっか、まあ…」
「時間があるから…暫…くこ…う、…し」
途中で言葉が止まる。
何を言おうとしたのかなんとなく分かるが。

彼のキャラで、いう言葉では到底ないものだ。


“暫くこうしていたいとか”


お前はどこの乙女だ。


言いかけた言葉を強制終了して、また首まで真っ赤になっている銀時に、土方はあっちの行為に及ぼうという考えが遠くに行く。
この新鮮な銀時を、暫く見ていたい。
「…ははは、いいぞ〜マジで、お前パー子だよパー子」
「そっか乙女の格好をすれば乙女になるのかあ…ははは」
そのまま笑いが止まらなくなる。
目の前で、笑っている銀時を不意に抱きしめたくなった土方はそれを迷わず実行する。
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