銀魂文

□そこら辺がたまらない(土銀)
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★★★
「…っ…だいま〜…あれ?銀さん?退君、銀さんそこらへんに居ない?」
「…君…八君、やばいよ、なんか面白いことになってる」
「…来ても良かったのかな?」
「しーらない、ああ、でも副長幸せそう…てゆか寝顔初めて見るよ」
「え?」
「副長、人前でなかなか寝ないんだ。こんなに爆睡しているの初めて見る、なんか坂田さんには命預けてるみたいに見える…いいなあ…羨ましい」


「…ん?…うるせぇな…」

「あ、すいません、起きてしまいましたか?銀さん、はい」
「ん…?ども…」
首の後ろを掻きつつ起き上がった銀時に新八がコップに入れたイチゴ牛乳を差し出す。
それを受け取って飲みながら、自分の下に居る人間を見て微笑んだ。
まだ寝息を立てている土方は起きる気配すらない。
まるで、傍に銀時が居ることに安心しているようだった。
「…なんか、邪魔ですか?」
新八がそう銀時に質問している最中に、山崎は既に玄関に向かい始める。
恐らくもう答えがわかっているのだろう彼は、自分が土方の寝顔を見なかったことにするのだろう。
こういう弱いところを見られる事を土方が酷く嫌がるのがわかっているから。
銀時は、答えが出しやすい状況に感謝しながら、頷いた。
「ああ、邪魔」
「もう、はっきりだなあ…」
テーブルにイチゴ牛乳入っていた空コップを置いて、銀時は新八の頭を撫でた。
「いっから、もう少し、コイツに寝ていて欲しいもんでな」
「…はい」
物分かりのいい彼は銀時に笑いかけてから、山崎の後をついて外に出て行く。
見送ってから、銀時は静かになった家の中で、寝息を聞いた。
その主を見下ろして、銀時は微笑む。
「ほう、土方君は、俺に命を預けてるんだ」
「…ん…」
「あ?煩い?」
「…銀…とき…」


幸せそうに寝ている。
人前じゃなかなか寝ない。


嬉しい情報を有難うよ、山崎。


「…多串君、十四郎君、トシ君、土方君」
「…」

取り敢えず、呼んでみるだけ呼んで、それでも起きない彼に笑う。
相当、安心しきっているんだと。

それは、惚れた冥利に尽きるよ。

その瞑られた目が、次、開く時は、一番初めに俺が視界に入るんだな?

綺麗な顔。

「…キスしてしまいますか」

そう呟いて、銀時は土方の額にキスをする。
そのあと、頬と、唇に。

触れるだけの優しいキスをして、やったことに気恥ずかしさを覚える。
頬が赤いだろうとそこを触ってから。銀時は目を細めた。

「甘いね〜…」

すっごい甘い気分だ。

甘いから。

美味しく頂いてしまうぞ、この気分。





また、土方の胸に頬をつけた銀時は目を瞑る。

「…おやすみ」

小さな言葉を、部屋が静かに吸い込んだ。



俺も安心している。



この安心感は、お前以外、多分誰にも与えることはできないよ。
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