銀魂文

□天―七夕@(沖+神)
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「あらあら、いいねぇ、肩車」
「あの人は子供と遊ぶと天才的に心を掴むからな」
「へえ」
「ところで、銀時、笹ってのは」
「ん、うん、ちょっとね、神楽が」
「…」
銀時がそういってここに来るまでの経緯の説明を始めると、土方はふっと笑いを漏らした。
「…チャイナ、総悟みたいなことを言いやがる」
「え?」
「総悟な、昔、七夕の笹飾りやりたいと言って、俺らを困らしてな」
「へえ…」
それはまた可愛い記憶だと、銀時は思いつつ、クスクス笑う。
それを見て、土方は続ける。
「で、今みたいに、近藤さんに肩車されて、笹に飾りをつけて…嬉しそうにして」
「…」
「と、あんな頃が懐かしいくらい憎たらしい餓鬼になりやがって…」
「そんなこと言って、嬉しそうですよ土方コノヤロー」
「まあな、元気に育ってくれてよかったんだよ、ちょっと体が弱かったからな」
「…そうなんだ」
「ちょっと土方さん!人の暴露話やめてくだせぇ…」
割り込みが入る。
余り隙間が無かったはずの二人の間に割って入った沖田に二人は見合わせて笑った後、土方が先に口を開く。
「嫌だね」
「ああら、総悟君てば、ちょっと赤いですよ〜?」
「くそ土方…って…旦那ァ…ちょっと苛めないで下さいよぉ…」
「いまクソ土方って言ったなてめぇー!!!」
突付く銀時に総悟は更に頬を染めるが、その後ろから土方のヘッドロックが入って暴れる。
その様子を眺めながら、銀時はまた近藤に肩車をされる神楽を見る。
いつの間にやら新八の隣には山崎が来ていたらしく二人を指差して笑っている。
銀時は笑っている理由を、見るためにまた二人を眺める。
どうやら髪を引っ張っているようだった。
抜ける抜けると叫んでいる近藤は別に怒っても無く。
笑う神楽も抜く気は無いらしいが、わざとやっているようだった。
それを、眺めて、銀時は微笑む。




近藤は。


神楽の奥底に秘めた寂しさに気付いているようだった。


「あの人すげぇな」
「近藤さんのことか?…当たり前だろ、だから俺はあの人に付いて行くって決めたんだよ」
「…銀さん妬いちゃうぞ〜?」
「上等だ」
「あの〜離してくれません?」
沖田が別の意味で嫌そうな声を上げる。
それに気付いて、銀時が土方の肩を叩く。
それに反応して、ようやく離した土方は、少し考えたあとに口の端をあげた。
「ああ、すまんな、ほら近藤さんからチャイナ奪還して来い」
「な!違うってーの!誰があんな餓鬼なんか…」
「え〜そうなの〜?」
「違う!旦那、俺が好きなのは、坂田の旦那ですからね〜!」
「マジでか!」
走り去っていく総悟がしかし、近藤の方に走っていく。
それを見送って複雑な気持ちの土方は眉を寄せて銀時を見る。
しかし、銀時は余裕そうに笑っているだけだった。
「俺、大概…年下キラーだね」
「や、そこかよ…てめぇ…」
「もう、俺については随分前にちょっと年下に落とされちゃった感があるけど、ありゃ、多分いっぱい好きな人居るね総悟君」

まず、近藤。
それに土方。
そして自分。
んで、神楽。

少なくとも四人。
でも、その彼が一番好きなのは、実は自分の隣に居る人。
分かるんだけど、譲らない。

ランキングが常に変動するらしい彼は、とにかく今、神楽と近藤を引き離すことに全霊を注いでいるようだった。


「銀時、あの〜」
「何?」
土方が躊躇いがちに問う声に、銀時は彼を見る。
土方は頭をかきつつも、呟き加減に言った。
「随分前に年下に落とされてる、て俺のことだよな?」
「ああ、そうだねぇ」
「…あんまサラッと言われたからビックリした…」
「やだ〜可愛い〜!!!銀さんそういうのに弱いのよ〜?」
その言葉と共に頬を突付くと、土方が頬を染める。
その後嬉しそうに笑った土方を見てから、笹を取ってきたらしい山崎と新八が屯所の縁側にそれを置いたのを見た。
「屯所で七夕やって良いですか?」
「は?」
「銀さん、皆でやったほうが神楽ちゃん楽しいですよね」
「…おいおい、迷惑じゃないの?」
「銀時、お前が迷惑じゃないの?とか聞くと笑いにしかならないぞ」
「なにィ〜人が折角なけなしの遠慮の心で…!!!」






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