銀魂文

□天-七夕A(山新)
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一回戦、沖田総悟。

バズーカ発射。
『おわっ!!!』
『ちっ外した!ま、いいや土方さん、手加減してくださせぇ、俺は本気で行きますが』
『手加減なんぞ出来るか!!!てめぇ今日こそ奈落に葬ってやる!!!』
『しゃあねぇ人だ』
『どっちがだ!』

その二人の凝った登場場面の台詞を聞いて、山崎は確信した。
「あんの…くそ親父がぁ!!!」
「…凄いですね、こんな会話するんですか?」
「まんま!…ちょっと加工しているけど流石は天人の技術だよ違和感無いし!!!」
「あはは」

二回戦、神楽(特別会話はなし、通常デモ)
三回戦、山崎(敬礼、睨まれる、怯える、構える)
四回戦、高杉(無言で構え)
五回戦、銀時(口喧嘩勃発、何を言っているかは1回聞いただけでは不明だが、口喧嘩で息が切れた所から始まる)
六回戦 近藤(ボスの前)

「…おお、近藤さんと対戦だ!!!彼のことだから打撃は強いから要注意だけどスピードにおいてはこっちが勝ってる!」
「何って言うのかな〜?だって親友同士でしょ〜?」

新八が山崎の隣に座って仲良く会話している様子を遠巻きに女の子たちが携帯で撮っていることなど、二人は知らない。
見た目可愛いカップルと思われることはなさそうなのだが、後ろにいるのは少し廻りとは考え方が違うお嬢さんたちだ。


と、店員が思っているのだが。


『アンタと戦えるなんて正直嬉しいな』
『そうだなぁ、よし、久々にやるか…』
『上等だ!!!』
『言っとくが、手加減なしだぞトシ!いいな?!』
『そっちこそ!』


「これ聞いたら副長、赤面だね」
「…そうですね…ん?」
「ん?」
新八は後ろに気配を感じる。同じく気配を感じたらしい山崎がそっと後ろを振り向くと、こそこそ覗き込んでいるらしい女の子たちが台詞を書き取っているのが目に入る。

そうそう、ボス寸前の六回戦目なんて結構いくの大変だから。

などと悠長に考えているうちに、後ろの少女達は、山崎に気付いたようだった。
「あれ?あの人…」
「あ、やべっ」
ついでに新八にも。
その瞬間山崎はゲームを放って新八の手を取って駆け出した。
「それやってね〜!!!」
走り去っていった山崎と新八を見送った後。女の子たちは嬉しそうに話を始めて大騒ぎするのであった。



「退君、退君!誰も追って来ないよ!」
「だろうね、どうせ面白話に花を咲かせるんだろうよ」
「?」
首を傾げる新八になんでもないよと言って、山崎はゲームコーナーのあった方向を眺めた。
マニアックはマニアックなりに、そういう存在を知っている。
山崎は苦笑いをした後、新八のほうを振り向いて、俯いている彼に首を傾げた。
「新八く……あ」


手を握ったまま。


「あ、ごめんごめん」
そのままでいたことに気付いて、山崎は謝りながら、その手を離そうとして、逆に握り返されてしまった。
「新八君?」
「あああ、なんでもないです!!!すいません!!!」
無意識の行動だったのだろう。
新八は謝りながら手を離して赤くなった顔をそれで扇いでいる。
山崎はその様子を見てから、彼に見えないように口元の笑いを手で隠した。

細い手だ。
自分の手も大概細いが。
握り返してきた、強い様で弱い手の力が、愛しさを倍増させる。

「退君、ええと…」
「あ、忘れてた、プリクラを後で撮って帰ろう!」
「…は、はい…」

意外と大きい手だった。
華奢そうに見えたのに。
やはり、真剣を持てる位の手だ。

思わず握り返した時の僕の気持ちって。


なんか、僕らしくなく。




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