銀魂文

□天-七夕A(山新)
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もっと繋いでいたいだなんて。


「うわあ…」
「どうしたの?」
「なんか退君といると戸惑うくらい自分らしくないや」
「…え、ええ?!」
言葉が足らず。
もしかしてストレスを感じているのか?と言ったような勘違いをしたらしい。
新八はそう思って慌てたらしい山崎を見上げて首を振る。
「違いますって、嫌とかっていう、そういう意味じゃないですよ」
「え?あ、そうなの?びっくりしたぁ…」
「らしくないというより、知らなかった自分がいっぱい出てきた感じ?楽しくて、でも戸惑ってるんだ」
「………」
「?!ど、どうしたの?退君!!!」


可愛すぎる。

なんなんだそれ。


「新八君自分追加発見の旅…」
「ななな何言ってるの?!」



力が抜けて壁に寄りかかった状態で幸せを噛み締める山崎に新八が段々赤くなる。
「ちょっと、退君!」
「うんうん、分かってる、もうちょっと待ってて」
「…もぅ…」
何やら浸っているらしい山崎にため息をついてから新八は近くにあったベンチに腰掛けた。
数秒後、同じくベンチに腰掛けた山崎が照れたように笑う。
「ごめんね」
「いえ」
「なんか、こういう気持ちって慣れてなくてさぁ」
「でも、あからさまに喜ばれるとこっちが照れますよ」
「照れてる新八君可愛いからいいよ」
「も〜!!!やめてくださいって」
笑いながら頬を突付かれて新八が真っ赤になる。
足を踏まれて少し痛がってから、山崎は目の前のデパートの中央ホールに飾られた笹を見た。
数メートルの巨大な飾り。
笹とともに、それが無数にぶら下がっている。
それが、あることに気付かなかったのがおかしいくらいの壮大さ、美しさに山崎は自然と笑みがこぼれた。
「凄いね!」
「これ、仙台藩の笹飾りって奴ですよね」
「良く知っているね」
「退君も知っているくせに〜…新聞でよく見ますよ、垂れ下がった商店街とか凄いらしいですよ、前が見えなくて〜!」
「恋人なんか手が離れちゃったりして?」
「そうかもしれないですね」
「俺は離さないから安心してね」
「当たり前です」
「!」
「ふっ」
山崎が声を詰まらせると、新八がしてやったりの顔を作る。

先程の意趣返しか。

山崎は一度うな垂れた後、新八の髪をぐしゃぐしゃにする。
「こ〜の〜新八ィ〜!!!」
「わあああ」
さらさらの髪を指の間から通してみて、山崎はそのまま新八の顔を覗きこんだ。
「…離さないからな、本当」
「手ですか?それとも、もっと怖い意味ですか?」
「言うねぇ…判断は君に任せる」
「はい」




ん?





新八は少しだけ考えてから山崎を見た。
「いま、呼び捨てにしなかった?」
「え?してないけど?」
「…ん?あれ?」
「…」
考え込んでる君はわりと凛々しくて可愛いんだけど知ってる?



しかし、ああ、危ない危ない、思い切り呼び捨てちゃった。



にしても耳聡いんだから。
流石は新八君だ。
突っ込みの根性をこんなところで発揮しなくても。
もれなく救う千手観音かよ君は。

ああ、でもそれ素敵…俺のだけこともれなく救って欲しい。

菩薩は姉上殿ではなく君だよ君。



「退君、またどっか飛んでますね?」
「うん…飛んでます」
「…あんまり飛んでると、不意打ちしますからね」
「おお、上と……………」



不意打ち万歳!!!



という言葉が頭の中を支配する。

軽く触れた唇。

さっき黙ってたのは、周りに人がいないことを確認していたのか。
てゆか。


「初めて君からキスされた!」
「でかい声で言うな!!!」
「ごめんなさい!!!大好きだ!!!」
「謝ってんのか更に怒られたいのかどっちかにしてくれ!」
喜んでベンチにへたり込んでいる恋人に、新八は自分の唇を押さえた。
大胆行動。
良く取れたものだ。



でも。

離さない。

とか。



さっきの繋いでいたいという自分の気持ちと重なることなんか言うから。
思わず動いちゃったじゃないか。
触れた唇が、段々熱くなってくる。


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