銀魂文

□パフェ日和(近+銀+土)
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「俺は、山崎と見回りしてくる」
「ああ、トシ、気をつけてな」
「ああ…あ、曲がってる」
「あ、ごめんごめん」
近藤のスカーフを直す土方。
銀時はそれを見て吹き出してしまった。
それに怒ることも無く、土方も苦笑いを浮かべている。
余りにも違和感の無い行動だ、毎回の、やり取りとしか思えない。
「多串君って苦労しているのね」
「まあな、じゃ、万事屋!あんまり近藤さんに迷惑掛けるなよ!!!迷惑掛けたら斬るからな!!!」
「あいあい〜」
「…っち…あ、近藤さんもあんまり振り回されて何でも奢るなよ?!」
「あいあい〜!」
「…!!!てめぇら歯ぁ食いしばれぇえええ!!!!」

鈍い音が二つ。
土方の拳を喰らった二人は暫く道端で蹲ったのだった。


「う〜ん真っ直ぐな子ね」
「痛かった…」
「てゆか、お父さんっぽいお母さんみたいだ…」
「そうそう、お父さんっぽいお母さんみたいだ…」
頭を擦りながら、土方を思い浮かべて、二人は歩く。
市中見回りを開始したらしい真選組隊士や、巡回中の普通警察がすれ違うたびに敬礼をしていく。
やはり偉いのだろうなと、思い見上げてみて、近藤が楽しそうにしているのに気付く。
「どうした?」
「ああ、トシと銀時と飯食うのって初めてだろ?お前ら仲悪すぎるから絶対無いと思っていたから…嬉しいんだよ」
「何がだ、男とテーブル囲むのは結構萎えるぞ?」
「そっかな?俺は男だろうと女だろうと皆で食卓囲むのが好きなんだ、一人の飯より断然美味いだろ」
そういって笑う。
何を根拠にそこまで自信を持って言うのか。
近藤のその顔を見つめた後、銀時は眉を寄せる。
「…へ、そんなもんかね」
「何言ってんだ、銀時だって新八君と神楽ちゃんと食事するのは楽しいだろ〜」
「別に…考えたこともないな」
「そうか」


土方と思考が似通っているな。
傍から見れば全然違うタイプなのにな。


「…じゃあ、考えたら?」
「…ま、楽しい、かもね」
「だろ、俺の言うことはおかしくない」
「ああ、だな」

でも人によるな。
土方と食べてみると、それはそれで面白いけど。

俺的には。

近藤を見上げて、銀時は頭を掻いた。
「やばいな、多串君と思考が同じなのは」
「へ?」
「ううん〜なんでもない〜」
「あ、この甘味処、パフェがマジ美味いんだぜ?」
「ええ、マジ?あ、また高そう、ま、いいや食いたい!!!」
「はいはい」
腕を引っ張られて近藤は苦笑いで付いていく。

そこのパフェは思いの外美味いもので。


目の前で近藤がまさかのパフェを頬張る、妙に可愛い姿。
コーヒーゼリーパフェと、フルーツパフェが肩を並べて。



束の間。
いつもはたくさんの人に囲まれる彼を独り占めしてみた。



「…」
「本当に美味いなここ」
「ああ、マジ美味い」

別に好きじゃあないけど。
ああ、でも、分かるんだよ。

この人を、自分だけのために欲しくなる気持ち。

何があろうとも彼のために耐えて、頭脳と剣を振るう。
そんな、彼の片腕である土方なんかはもっとその思いが強そうだけど。
純粋にこの雰囲気が、自分の世界に欲しいかもしれない。
いればウザイし、ストーカーだし、なんか、図体でかいのに甘えん坊っぽくて気持ち悪いけど。


「…なんかいいなあ、ゴリラって」
「ゴリラは酷くない?」



いると安心するかもしれない。



何やら、いきなり笑い出した銀時に近藤は首を傾げる。

そういえば、今日は暑い日なんだが。

さっきまで忘れていた。



パフェが冷たいからかもしれないし。
この目の前の涼しい銀色がそうさせているのかもしれないし。




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