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□雨宿
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さっきまでの天気が嘘のように、
どんよりとした鉛色の雲が空を覆う。
ふいに沢山の点々が
落ちて、増えて、広がって
あっという間に江戸の町を包み込む―――

鬼の副長の異名を持つ真選組 副長、土方十四郎はめずらしく江戸の下町をパトロールしていた。
そこへ急に降ってきた夕立。
かなりの量だが走って帰れば何とかなるだろう。と考え土方は片手で頭を被うと足早に屯所へと向かった。
なれたもので、細く狭い道も迷うことなく走ってゆく。
「多串君?」
ふいに目をかすめた人物に―――
というより聞き覚えのある声に呼び止められた。
「やっぱ多串君だ。こんな雨ん中何急いでんの?」
やる気なく話しかけてきたコイツは坂田銀時。
死んだ魚のようなやる気のない目に、銀色がかった天然パーマが特徴的なヤツだ。
「誰だよ多串って…言っとくが俺は土方だ」
「へぇ、じゃあ土方君。そんな急いでどこ行くの?」
詫びる様子もなく会話を続ける銀時に、土方はツッコむ気力もなくただ顔が引き攣る。
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