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□恋い焦がれるは椿姫、黒揚羽
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アゲハ蝶:ポルノグラフィティ







ひらり ひらりと
舞い遊ぶように姿 見せた揚羽蝶
夏の夜の真ん中 月の下
喜びとしての黄色 憂いを帯びた青に
世の果てに似ている漆黒の羽





〓〓〓〓〓恋い焦がれるは椿姫、黒揚羽〓〓〓〓〓






―…
雨に濡れた華弁を、たっぷりと広げて僕を誘う真っ赤な八重椿。
君の隣で僕も一緒に咲いていよう。
椿の香りにさ迷い舞い遊ぶ、僕らは2匹の揚羽蝶。
赤の中に彷徨する漆黒の羽。
対をなして互いを求め合う、激情・欲情・激しい熱情。

空しい劣情。

それとも僕1人が、君の甘い蜜に魅せられた孤独な蝶々?
たがら君は妖艶に微笑んでは
淫らに濡れた蕾を、僕の熱の下に広げて乱れて咲くの?










赤と黒のコントラストがあまりに鮮明に刻まれて、
忘れられなくて。
収まらない熱を
君と、互いに抱き合っている中ふと窓のフレームの奥に見つけた八重椿。
それを後景に飾っては、逢瀬を楽しむ2匹の蝶々。
色の美しさに暫し見惚れて、自分を重ねた。
愛を語り合う彼らに“俺”の幻想を夢を見た。
けれども、君のその、真っ赤な口唇が
“想いを馳せる愛しい誰か”を、
俺ではない別の男の名前を…
その口唇が形取る。
その瞬間に、俺は現実に引き戻されて、
再び意識は奈落の底へ。


彼の口唇が、俺の名前を呼ぶことは永遠にない。
所詮俺は、“誰か”の身代わりでしかないのだから。

沈む想いと上昇する体温、呼吸。
相反する対照的なリアルに息が詰まる。
本当は君との恋に溺れたい。
けれども、それは俺の一方的な勘違いで、この恋が叶うことはないのだろう。
―…そう、永遠に。

“愛してる”を囁くことさえも、禁忌として
その想いを殺して、殺して、欲だけを満たす。
でも…―
愛を告げたい、好きだと言いたい。
君を奪ってしまいたい。

快楽に震え喘ぐ、悦びとしてイエロー。
絶頂に切なく眉を寄せる憂いを帯びた月光のブルー。
恍惚感に誘われて、照らされ、どこか幻想的なミルキーブルー。

月の光りに汗が光る。
僕を高揚させるのは、君の甘すぎる鳴き声。
甘い甘い蜜と同じ、甘すぎる啼き声。

貴方に逢えた、それだけで良かった。
世界が、僕の血生臭い世界が光に満ちた。
ただ夢で逢えるだけで良かったのに。
愛されたいと、そう心から願ってしまった。
愛したい、と伝えたくて堪らない。

世界が表情を変えた。
欲望の果てに僕と君は、本能のままに交わる。
そして、世界の果てでは…空と海が交じる。

男の心を弄ぶその妖姫。
そう…君は、僕を虜にして離さない椿姫。
そして僕は、君の手の上で、弄ばれることも承知の上で、
何も知らないフリをして、君の柔らかな蕾に性器を突き立てる。

君の、熱い胎内に。

君の手で、羽をむしり取られるその日まで、僕は君の蜜に溺れる。
僕の手で、君の美しい羽をむしり取るその日まで。


















僕の下で、淫らに踊ってくれよ、椿姫。





















* * * * * * * E n D





2005.08.31サディスティック症候群飴子
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