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□Invisible Horror
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「どうする土方?帰る?」

テレビ画面からペドロは消え、今は闇がそこにある。
銀時に問われて外を見やれば、当然ながら真っ暗だ。
万事屋から屯所までの道のりを思い、土方は小さく身震いした。
帰りたくない。
だが、それを素直に言える土方ではない。

「もう遅いし泊まってく?」

思案に暮れる土方に、銀時から助け舟が出された。

「……そうさせて貰う」
「んじゃ、俺風呂に行ってくっから適当にしてて」
「え、ぁ…」

ほっと安堵の息をついたのも束の間、土方は独りにされる不安に身体を強張らせる。

「ん?土方先に入る?」
「いや…その…」

居間に独りにされるのも嫌だが、風呂のような密室で堪えられる自信は無い。
言い倦ねて、土方は口ごもる。

「い…一緒に入ってもいいか」
「そりゃ大歓迎だけど」

明らかに揶揄う声音に反感を覚えながらも、独りにされるよりマシだと、土方は自分を納得させる。
反発よりも、恐怖が勝っていた。

「ふぅん。じゃ、一緒に入ろっか」

恥ずかしさに俯いた土方は、我が意を得たりとばかりに笑う銀時に気づけなかった。




「あ、俺着替え持ってくるわ。土方、先に入ってて〜」
「……ッ!?」

既に服を脱ぎ始めていた土方は、あっという間に脱衣所を出て行ってしまった銀時に碌な反応を返せなかった。
追いかける訳にもいかず、土方は脱ぎかけの着流しを足元に落とした。

「……………」

風呂場に足を踏み入れても、銀時が戻って来る気配は無い。
じっとしていると余計な事を考えそうになり、土方は頭を洗い始めた。

「………ーー〜〜ッ」

最初に洗髪を選んだのは、全くの失敗だった。
目を閉じると音に過敏になる。
窓を揺らす風の音にすら恐怖を感じ、瞼裏にはペドロの映像が甦る。
背筋を這い上る怖気に堪えきれず、湯を被ろうとした土方の身体に温かい手が触れた。

「ひっ…」

突然背後から抱き込まれて、土方は身を竦ませる。

「銀……?」

今この家に居るのは自分と銀時だけ。
だから銀時の名を呼んだのに、返事がなくて土方の心臓が一つ脈打った。

「銀時…ッ?」
「……………」

目を開けて銀時の姿を確認したくても、泡の所為でそれもままならない。

「銀ッ……ふぁっ!?」

乳首を摘まれて、甘い快感に身体が跳ねる。

「ぎ…ん…ぁ、あ、や…銀ん…っ」

声が聞きたくて、今自分を触っているのは銀時だと確かめたくて、土方は銀時の名を呼び続ける。

「く…そ、なんか言えよ…ぁあっ」

胸から手のひらが滑り降り、緩く勃ち上がった性器を掴まれる。

「ふ、や、ぁあ…ん、く…銀時…?」

身体を這い回る手が銀時だと信じ切れなくて、閉じた目に涙が滲む。

「……………」
「ん、ぅ…あ…銀…っ」

慰めるように舌で涙を拭われ、唇に柔らかいものが触れた。
その口吻けで、土方は背後の人物が間違いなく銀時だと確信した。
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