【白虎のお題】

□33.夢見の悪い夜
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何度肌を重ねていても
心が手に入らない
あの男の本音が見えない
手を伸ばせば届く距離にいるのに
伸ばして掴んでも
指の隙間からするり逃げてゆく



こんなに辛いのならばいっそ
忘れてしまえたらいいのに、と思う



求められ、抱かれても
心はないのだと、思い知るだけ
この男の瞳に私は映っているのか
瞳の奥に宿るのは一体何…?



恋に落ちた瞬間から私の負けは確定
気付いた翡翠が優位に立つのは仕方がないけれど

今私にあるのは
求められた時に応じる体だけの関係
安心感などあるはずもない

私にあるのは喪失の恐怖と
孤独感や焦燥感

それでも翡翠の腕を払えないのは
そんな関係にすら縋ってしまうのは
私が弱いから

愛されてなどいない
そんなことはとっくに解っている
それでも
愛されたい
翡翠を手に入れたい
独占したい
私だけを見て欲しいと
愚かな事を思う







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