読み物

□blue sky
1ページ/1ページ

パソコンに向かい数式と理論を打ち込んでいた

仕事は終っているし今日は講義もない

自宅でのんびりしようと思っていたのだけれど
つい仕事をしてしまうのは悪い癖

せっかくの休みだというのに一人だから…

ふと窓に目をやると抜けるような青空



―――…こんな空は

あの国を思い出させる

あの男が生まれ育ち

そして出会ってしまった地

あの国は空も海も、とても美しかったから…―――





青空をみて感傷に浸るなんて

こんな日に部屋にいるからいけない


気分転換に散歩でもしようと上着を取り玄関へ向かう


ガチャ



いきなり目の前で扉が開いた



「おや、わざわざ出迎えてくれたのかい?」


顔などみなくても今どんな顔で私を見ているか分かるから腹が立つ

と同時にこんなに早く帰ってきたことが嬉しいと思う自分が恨めしい

「出迎えたわけではありませんっ!これから出かけるだけです」

「あぁ、そうだったの」

「―――…ですから、退いてほしいのですが…」

「何処へ行くのか聞いても?」

「貴方には関係…」

ない、といいかけ言葉を飲み込む
たまには…私からでもいいかと思った
やはり今日の私はどうにかしているらしい

「―――…特に決めてはいませんが昼食をとるつもりですから暇なら付き合いなさい」

「―――…珍しいこともあるものだね」

「行くんですか、行かないのですか」

「私が姫君のお誘いを断るとでも?」

「一言余計です」



そう言いながらも顔が綻ぶ

顔を上げた先に何時もの笑顔があったから





二人並んで歩く道はもうすっかり春の色



「翡翠」



名を呼び振り向いた頬に一瞬触れるだけのキスをしてやった



こんな休日もたまになら悪くない







.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ