読み物U
□●Happy Birthday My Dear…
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「Happy birthday、翡翠…―――」
誰もいない夜の海に向かって囁かれた言葉
甘く優しく、切ない声音で
次いで投げ込まれる真っ白な花束
生誕を言祝ぐ言の葉と手向けの花
これ以上不釣り合いなものはない
「―――…莫迦者」
再び紡がれた言葉は砕ける波音に飲まれて消えた
遠く離れた時空で出逢い共に過ごした
そしてこの時空でも共にあった
当たり前だと
当然だと思っていた日々
愛していた
いや、今でも―愛してる
今なら何度だって言える
「貴方だけを愛していますよ
貴方のいない今でさえも
私を置いて逝った、貴方のことを」
だから貴方の逝った日ではなく
生を受けたこの日に伝えましょう
貴方を、貴方だけを愛している
生まれてきて
出逢ってくれて
ありがとう…―――、と
まだ…逢いになんて行きませんからね
もうしばらく待っていなさい
必ず、貴方のそばへと還りますから…―――
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