読み物U

□編集中
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さらさらと言う衣擦れの音
衣に焚きしめられた侍従がふわりと香る
「―――お邪魔してもいいかな、姫君?」
耳に心地よく響く低い声
絵巻物から抜け出たかのような美しい公達

やってきたのは私と同じく白虎の守護をうける方
そして左近衛府の少将で帝の覚えも良い橘友雅殿―――


この方と言葉を交わす様になったのはいつからか
共に過ごす時間が心地よいものになったのはいつからか
いつからこの方に心奪われたのか―――

「ねえ、鷹通。君の事が好きだと言ったらどうする?」

このような事を言われたのはつい先日の事
いつもの戯れかとも思ったのです
しかし、そうではなく本気なのだと仰っていた―――

友雅殿ともあろう方が何故、と思ったのです
そして私自身の気持ちはどうなのだろう、と悩んだのです


どのようにお答えしたらいいのか解らないのです
まだ答えが用意できていないのです、友雅殿
ですから、まだ貴方にはお会いできないと申しましたのに
治部省にまでいらっしゃるなんて狡いですよ―――

「返事を聞きに来た訳ではなく、確かめたかったんだ。
―――君が私の事だけを考えていたかどうかを、ね」


貴方の思惑通りに貴方の事しか頭にありませんでした
貴方の事が四六時中頭から離れなくて
でも、この気持ちはけして嫌ではなかった―――

「友雅殿、私が貴方をお慕いしてますと言ったらどうなさいますか?」

私がこう告げた時貴方は本当に驚いていましたね
友雅殿の驚いた顔を見る事が出来たのはきっと私だけ
私だけが知っている友雅殿―――


「本当に君は私に想像も出来ない事をしてくれるね。だからこそ目が離せない―――」
「ええ、何をするか解りませんから目を離さないで居てください―――」
「その様な事をいうと本当に何処かへ連れて行って閉じこめてしまうよ、月の姫君?」
「――――――…そうなさいますか?」
「そうして欲しいの?鷹通―――」

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