SUMMON NIGHT

□黄昏時
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「…なァ、カノン。」
限り無く白に近い薄紫の肌と髪をもち、赤紫の鎧とマントを纏った長身の人影が、隣に腰を下ろしている小柄な影に声を掛けた。
「何です?バノッサさん。」
カノンと呼ばれた、少女の様な容姿の少年は、自らバノッサと呼んだ男を見上げた。
バノッサはカノンの隣に腰を下ろすと、カノンをちらりと一瞥した。
「なァ、カノン。お前、親を恨んでるか?」
カノンは、一瞬驚いた様な表情を浮かべたが、すぐにいつもの人当たりのよい笑顔を浮かべた。
「いきなりどうしたんですか?バノッサさん。」
「いや…。なんとなく…な。」
バノッサが珍しく苦笑すると、カノンはにっこり笑い、天を仰いだ。
「そりゃあ、ボクだって、捨てられた時は恨みましたよ。でも。」
カノンはそこで一旦区切ると、バノッサに向き合った。
「今は、誰も恨んでませんよ。それに、バノッサさんに会えたから、今は凄く嬉しいです。」
「……カノン…。」
バノッサは、ふっと笑みを浮かべると、なら、いい。と呟いた。
カノンは首を傾げたが、バノッサはすぐに立ち上がり、マントやズボンに付いた埃を払った。
「行くぞ、カノン。」
「はい、バノッサさん。」
カノンも急いで立ち上がり、バシバシと埃を払って、バノッサの後を追った。

ついさっきまで、世界を紅く染め上げていた夕陽は、今は城の影に落ち、夜の帳が降りてきていた。





ボクは、バノッサさんがいれば、もう、何もいらないんだ……。
だから、ずっと一緒にいて。
バノッサさん。









わかっていた。この日々は、そう長くは続かないと………。

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