SUMMON NIGHT

□夕暮れ時
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紅く染まった空の下、二つの影があった。背丈が高く、細身の影。それから、少し小柄な影。
「バノッサさん。」
小柄な影、カノンがバノッサを見上げ、小さく呟いた。
「あァ?」
バノッサは、眉間に皺を寄せ、面倒くさそうに言った。
「ねぇ、バノッサさん。」
再度、カノンは呟く。どんなに不機嫌な顔でも、振り向いてくれる事を願いながら。
「だから、何だってんだ。」
苛立ちを露に、それでもバノッサはカノンへと振り向いた。
カノンは小さく微笑み、やっとこっちを向いてくれましたね。と言った。
「…用でもあるのか?」
「用って程じゃ…ありませんけど…。ただ、これだけは伝えたくて。」
バノッサは首を傾げ、何だ?と聞いた。
「バノッサさん、大好きです。愛してます。」
カノンは笑顔を浮かべ、そうバノッサに言うと、バノッサはとても驚いた様な表情をした。
「…カノン…、今…、なんて言いやがった…?」
「だから、愛してます。バノッサさん。」
カノンがさらりと、信じられない言葉を二度も言ったため、バノッサは暫く固まってしまった。
「バノッサさんは、ボクの事好きですか?」
「いや…。」
半ば放心状態のバノッサの反応に、嫌われてしまったかと思い、カノンは俯いてしまった。
「じゃあ…、ボクの事…、嫌いなんですか…?」
カノンが寂しそうに呟くと、やっと我に返ったバノッサは小さく弁解した。
「…嫌い、じゃねぇよ。」
とても小さい、辛うじて相手に届く位の言葉は、一瞬でカノンを笑顔にした。
「じゃあ…、いつか…、バノッサさんからも、愛してるって言って下さいね。」
「…フン…、いつかな…。」
そう言ってそっぽを向いたバノッサの頬は、夕陽のせいだろうか。ほんの僅か、赤く染まって見えた。











愛しくて優しい人。
いつか必ず、愛の言葉を囁かせてみせる。
近い将来訪れるであろう、別れの前に。

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