過去拍手

□無題
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連日の雨。
朝と昼の温度差が激しい季節。
雨は足音を隠すから。
においを消すから。
気配をわかりにくくするから。
テロも多い。
神経をとぎすます。
どんなに小さな音でも。
変化でも。
匂いでも。
逃すまいと。

見逃すことは、自身の死を意味し。
大切なもの達の死を意味する。
被害を最小限に。

自分達はこの場所の守りの要なのだと。
心に言いきかせ、奮い立たせる。

ミスは許されないと、己に重責を課す。

そんなものから解放されて、唯一、安らげる場所。
緊張を、ほぐしてくれる場所。
生きていて良かったと、命を確かめられる場所。

濡れた体も気にせずに、早足に。
身にまとっている制服がおもりのように重い気がする。

できることなら飛んでいきたい。
今すぐ。
早く、あいたい。

カードキーを探す。
この作業すらもどかしい。
冷たい指先。
早く、君に触れたい、想いだけが先にいく。

しゅん、っと扉が開き、コーヒーの匂い。
君が居る。

「あ、おかえりなさい、 西脇さん。」
ほほえむ君。
帰って、来れたのだ。

「ただいま、紫乃。」



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