過去拍手

□Be ambisious ?
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梅雨明けも宣言されて、さぁ、これからもっと暑くなるぞ、って時期。
自分が何で警備隊に入りたいと思ったのか、分からずにいた。


Be ambisious ?


入隊して、まだ半年。4月に入ったときには、すごくやる気いっぱいで、早くこの隊になれたくて一生懸命だった。
何もかもが初めてのことばっかりで、がむしゃらに、先輩達にくらいついてくしか術が無くって。配属された、外警班。訓練校の時からあこがれていた人だったから、この人の近くで学べることがすごく、嬉しかった。

それなのに…。

なぜか、俺は、やる気がなくなってしまっていた。
はぁ。
今日何度目かのため息。
「どうした?」
後ろから、急に声をかけられて、思わず肩をすくめてびっくりしてしまう。
「ごめん、おどろかせたかな?」
後ろに居たのは池上先輩だった。この人も、外警班長である、西脇さんにも認められているすごい人。小柄だけど、状況をよく見て、的確な判断を俺たちにくれる。
「あ、いえ、すみません…。仕事中なのに、集中して無くて…」
そう、俺は今仕事中なんだから、後ろから近づいてくる先輩に気付かない、なんて、たるんでるにも程がある。これが、テロ犯だったら、どれだけの被害を招くことになるか………。
「まぁ、本当はそうだけどね。一応さっき勤務終わったんだろう?」
苦笑しながら、起こることなく笑いかけてくれる。
「はい…一応。でも……」
でも、先輩や班長達なら、こんなことは無いはずだ。それを考えて、またへこむ。
自分でも分かってる。自分がだめなんだってこと。こんな風にうじうじ考えて、へこむ奴なんか、この隊にはいらないんだってこと……。
「今から、時間ある?」
考え込んでいく俺を見て、池上先輩が、口を開いた。
「え…あ、はい。」
どうせ、これから寮に帰って寝るだけだ。そして、どうせベッドに入っても寝れない。でも…
「先輩は明日も早番ですよね?早く部屋に戻ったほうが…」
「いや、俺も誰かと話したい気分なんだ」
気を遣ってくれているのかもしれない。でも、滅多に話せない先輩と話す機会。誰かに話を聞いてもらいたい気もして、
「少し、コーヒーでも飲まない?」
という先輩の誘いに頷いてしまった。

ロビーのソファーに並んで腰掛けて、たわいない世間話をした。最近の天気とか、なんとか。
池上先輩は、優しく笑いながら話を聞いてくれた。当たり障りのない発言にだんだん自分で嫌気がさしてきて、口が止まってしまう。せっかくの、この機会。わざわざ先輩が、作ってくれたんだ。
コーヒーを一口飲んで、本当は一番聞きたかったことを、口にしてみることにした。
「先輩。俺、この隊にいていんでしょうか…。」
ぽつり。
この一言を口にするのに、手は変な汗かくし、口の中は渇くし、心臓はドキドキするし…。
「こんなこと、言われても迷惑ですよね。すみません。」
頭が真っ白になる。どうしよう、また、だめな奴って思われたら………。
「そうだなー。確かに、正直ちょっと困ってる」
しばらくの沈黙のあと、先輩が言った。
やっぱり。
「す、すみません。やっぱりもう…」
焦って立ち上がろうとすると
「でもね、」
と先輩が言ったから、踏みとどまった。
「でも、ちょっと嬉しい」
「は?」
今、なんて?先輩はくすくすと笑っている。
「なんでそう思ったのか、聞いてもいいかい?」
優しく言われて、迷ったけど、言ってみることにした。
「なんていうか…みんなすごすぎて……。何もかも、俺には足りないところだらけで」
体力も、判断力も、観察力も、忍耐力も………。何もかも、誰にも追いつけない。
「正直、どんなに頑張ってもおれはみんなの足手まといで、俺がこの隊に居ても、いいこと無いんじゃないかって。いや、まだ努力がたりないのは百も承知なんっすけど……」
結局自分が悪いのだとも分かってはいる。周りのみんなに比べて、努力がたりない。トレーニングの時間、自分の欲望の管理などなど。休みだってたくさんある。時間だってあるのに、何もしていない。置いて行かれる、自分。焦り、憧憬、ねたみ、そんな感情ばかりが大きくなる。
「自分が情けなくて……」
自分が何をしたいと思って入ってきたのか。それを忘れた訳ではない。と思う。それなのに、何がしたいのか分からなくなっている。
認めてもらいたい、対等になりたい、役に立ちたい…。
そんな願望ばかりが大きくなっている。
本当はそうじゃない。そうじゃなかったはずなんだ。
気持ちがぐるぐるしてきて、目の前が歪んで見える。とっさに、下を向いた。
「俺はね。西脇さんに追いつきたい、認められたい、ってすごく思うよ。西脇さんだけじゃない。隊長にだって、本木にだって、岩瀬さんにだって…」
指折り数えて、隊員の名前を挙げていく。
「でも、先輩はとっくに認められてるから…」
俺から見ても、すごく信頼されているのがわかる。班長に追いつく、なんてことも、この人ならできそうだと思う。
「そうかな。そうだと嬉しいけど、人からの評価って、自分ではなかなか分からないものだよね。」
珍しく聞く、池上先輩の弱気な言葉。いつも前向きで、みんなを引っぱっていってくれるのに。
「俺は体が小さいから、きっといろんなところで他の人に負担をかけてるんじゃないかとか、いつも思ってしまうんだ。」
「そんなこと…」
「うん、ない、ってみんな言ってくれる。でも、自分はすごく不安なんだ。どんなに努力しても、自分が努力しているのかも分からなくなる。まだだめ、足りないって、知らないうちに無理していたり。」
しばらく、沈黙が流れた。俺も、何も言えなかった。
「頭では分かってるんだけどね。こんなこと、考えていても仕方ない、ってことは。それでも考えちゃう。」
「先輩は、そういう気持ちはどうするんですか?」
「今、自分にとって確かなことを探してみる…かな」
「確かな…こと?」
目線をあげると、こちらを見てる先輩の目とかち合った。
「そう。例えば、自分は息をしてるよね、とか今おなかがすいてる、とか欲望はあるなぁとか。」
思わず目を見開いた。びっくりして。
「ちょっとびっくりする?でもね、それをずーと確認していって、自分に何が今確かに言えることなのかを整理するんだ。まぁ駄目な部分も、いい部分もなんとなく整理できた気がして自分的にはちゃんと前を向ける。」
いつもの強い、前を向いている先輩だった。
「少なくとも、俺の知る限り、この隊には必要ない隊員はいない。みんながそれぞれを信頼しているから、仕事を任せてる。経験があるもの、何か長所が有る者はそれを活かして他の隊員をカバーすればいい。経験が無かったり、自分ができない部分が有る者は、それを正直にだして、それをカバーする術を探せばいい。」
一言一言が力強く耳に響いてくる。あぁ、こんな風に悩んだのかも知れない。先輩も、きっと。

「この隊が、好き?」

そう、聞かれて、迷わずおれは、こう答えた。

「はい」

その答えを聞いて、先輩はもう一度、柔らかく笑って、

「うん、俺も。」

こう、言ってくれた。

それからいくつかまた言葉を交わして、「ありがとうございます」と「お休みなさい」をいって、寮の入り口で先輩と別れた。

悩みが解決したわけではない。
それでも、分かったことはある。
みんな、こんなことを悩んでいくのかもしれない。
自分の力を知って、焦って、悩んで…。
それを通って、何かがつかめるのかもしれない。

「そしてその背中を見て、新しい芽が育っていく…か」
池上は、廊下を歩きながら、つぶやいた。
同じ事を悩んでいた時期、自分は西脇さんに、話を聞いてもらった。
そのときの西脇さんのことばは、今でも覚えている。

人間は何で群れて行動するんだろうな。

なぞなぞ見たいに言ったその一言の意味は今ならよく分かる。
「あいつも、分かるといいな。はやく」
悩み、苦しみ、その中で人は強くなる。
成し遂げたい想い。
貫きたい志を持って。
そして自分も、分かっていけばいい。これから先、たくさんのことを。


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最近こんなのばっかり書いてます。オリジナルの新人隊員に出てもらいました。意味不明の箇所がたくさんあると思いますが、目をつむってやってください。
人の成長、とか悩みとか、G・Dの隊員たちだって…というか彼らだからこそ、たくさん持つんじゃないかなと思って書いてみました。自分の非力さ、無力さ。そんなものに直面して、なお目を背けずに居られたものが、本当に何かを変える力を手に入れるんだと思います。
逃げちゃ駄目(あ、○ヴァではないですよ)とか言われますが、逃げるのは悪いことではなくて、逃げ続けて、目を完全に背けてしまうことが、だめなんじゃないかな。逃げるのが必要な時だってある。周りもそれを受け止めて、逃げてもいいから、また目を向ける準備をしようよ、って環境をつくってあげられたらいいのにね。

とか思ってみたり致しました(^_^;)柄にもなく(苦笑)
ここまでおつきあい下さいまして、ありがとうございました。

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