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□変化
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変化

「寒いと人肌恋しくなるよね」
なんて言葉は、自分には関係ないと思っていた。
恋愛に対しても、何に対してもあまり執着しない。
自分でも淡泊な性格だなと思っていた。

たいていのことは一人でできたし、
寂しくなれば、一緒にいてくれるヒトはたくさんいた。
そのかわり、求められるとうんざりして、
急に冷めてしまう。

若いころ。

俺なんかに何を期待してるのか。
いや、期待していないくせに、
何を甘えた顔してよってくるのか。
人からの期待は、
重圧ではないけれど、
俺のことをよく知りもしないで
君はできるとか。
虫ずが走った。
期待は失望の予兆。
期待はヒトを縛り付ける
魔法の薬。

そんなことを思っていた。

だけど…ね。
年をとって、社会を知って、いろいろなことが分かってきて、
社会のこの反応はしかたのないことなのだと分かってきた。
誰かに期待せずにいられない。
誰かに依存せずにいられない。
誰かに依存されずにいられない。
誰かに
誰かに
誰かに………。
沢山の誰かに、無意識に。
結局ヒトの中で生きている限り、同じ「ヒト」に縛られる。

今の自分だって、「誰か」の「何か」に縛られている。

それなら、
どうせなら、
俺は多くを縛る側にまわろう。

そう思った。

君に出会って。
初めて縛られるのも良いかと思った。
君のために毎日を生き。
君のために一喜一憂し。
君のために自分を動かし。
君のために
君のために
君のために………。

同時に。
激しく君を縛りたいと思った。
もっと期待して。
もっと依存して。
もっと依存させて。
もっと
もっと
もっと………。

今まで否定して、ばからしいとさえ思っていた感情。
それが今、自分に芽生えている。
不思議な気分。
でも。

悪くはない…かな。ね。紫乃。


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西脇さんって、やはし少なからず紫乃さんと出会って、変化があったんじゃないかなぁ…と思って書いたモノです。うがぁぁぁってかんじです。

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