Novels

□Blieve
1ページ/3ページ

Blieve 

※お話中に、「病気」についての話がでてきます。こんなのありえないよ、という設定になっているかもしれませんが、そのときはお許し下さい。そういうのは我慢できないというかたは、引き返していただくことをお薦めします。
※このお話は、「人が死ぬ」ことについての葉山の考えがかなり濃く、表現されていると思います。微妙だと思ったら、すぐに引き返して下さい。よろしくお願いします。


side西脇

今日は5月だというのに日差しが強い。
夏というにはまだ早いだろうに、太陽はぎらぎらとした光を地上に落とす。
(今日は水分補給を気をつけないといけないな)
これだけ日差しが強ければ、いくら鍛え抜かれた体を持っている警備隊とはいえ、熱中症には敵わない。普段もそうなのだが、こんな日は特に適度な休憩を取らなければ、集中力、体力ともに持たなくなってしまう。

西脇はインカムで今勤務に当たっている隊員達にその旨を伝え、少し遅くなってしまったが、自身も休憩に入ろうと館内に足を向けた。

いつものように、愛しい人の待つメディカルルームに向かって足を進める。
ここ最近はテロこそなかったが国会だのなんだのでずるずると忙しかった。愛しい人にもなかなか会えず、寂しい思いをさせてしまった。
(いや…。さみしかったのは俺、か。)
西脇は、こんな時、よく考える。
昔の自分だったら、きっとこんなことは思わなかったに違いない。仕事を何より優先してきたし、疲れていれば、恋人といるよりも、一人の時間を好んで作っていた。一人で居ることは日常で、そこに寂しさなんて、感じるわけがなかった。
人と関わるのは好きだが、ときどき煩わしく感じていた。
本心の探り合い。
駆け引き。
普段は楽しんでやることも、時々うんざりしていた。
だれも結局自分を分かってくれないと。
分かって欲しくもないと。
どうせ別れるんだからと。
そんな独りよがりな卑屈な考えを抱くときもあった。我ながら青かったと、今となってはそう思うが。
思わず西脇の口元には薄く、傍目には分からないだろうくらいに薄く、笑みが浮かぶ。
(それが…ね。今ではこのざまだ)
どんなに疲れていても、足繁く通う自分。顔を見れば安心し、安らぎを覚える。ふわりと残り香をかげば、胸がかきむしられるほど、気持ちが揺さぶられる。
自分の変化にはじめはとまどいも感じたが、これが自分の今の正直な気持ちなのだと、最近は開き直っている。
今までつき合ってきた女性達に今の自分を見られたとしたら、きっと「ありえない」などと言われそうだ。
それだけ、彼は自分にいろいろな気持ちをくれた。変化を与えてくれた。少しずつ。少しずつ…。

しばらくしてメディカルルームAの前に付き、扉を開く。
「あれ……」
そこには愛しい人の姿が見えなかった。
(うーん。勤務時間内…だと思うけど。巡回、かな?)
はてと首をかしげ、まぁいいかと少しだけ、ベッドを借りることにする。休憩は30分。ここ1週間働きづめだったから、さすがに疲労も溜まっている。西脇は、ネクタイをゆるめ、ベッドに横になった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ