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□いたずら
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いたずら

「ねぇ、マーティー!今日知り合いから良い魚が入ったって連絡もらったんだ。一緒に食べにいかない?」
にっこり笑って、クロさんが部屋にやってきた。
「え…あ、はい。ありがとうございます。私でいいんですか?」
一応、確認してみる。
「あぁ。マーティーと一緒がいいんだ。」
「珍しいですね、クロさんが私を誘いに来てくださるなんて」
どうしようか迷ったが、こういう笑顔のクロさんを断れた試しがない。
「そう?ま、細かいことは気にしないほうがいいよ♪もう行ける?」
「え、あ、はい。こんな格好で良ければ。」
黒系のジーンズに城からかりていた、丈がおしりあたりまでの(ちょっとむかつくけど)大きめの水色のトレーナー。
対するクロさんはというと、青系のジーンズに白い、体にぴったりとした七分丈のシャツ。ちょっとごつごつした、どくろのネックレスが首からぶら下がっている。
「うん、全然かまわないよ。」
言うがはやいか私の手を取ると、クロさんは、上機嫌で歩き出した。廊下ですれ違った隊員達が思わずひいてしまうほど、超・ご機嫌で。

所変わって、クロさんの友人だという人の経営する料亭。
入り口がものすごくわかりにくい、隠れ家的なお店。照明が薄暗く、静かで雰囲気の良いお店だった。
「クロさん、ホントにこんな格好でいいんですか?」
何となく、ちゃんとした格好じゃないとはいれないんじゃないかと思い、聞いてみるが、「大丈夫大丈夫」とのお言葉を頂いてしまう。

がらっと妻戸風の扉を開けると、いらっしゃい、と優しい声で迎えられる。
「久しぶり」
なんの知り合いなのか、中が良さそうに談笑しているクロさんを見ながら、店の中を見回す。不思議な置物や、よく分からない漢字がたくさん飾ってある。
「マーティ、行こう」
面白くてそこら辺の置物を夢中になって見ていると、クロさんに呼ばれ、振り向いた。クロさんがちょいちょい、っと手招きしている。
「すみません」
そういいながら、クロさんについて、奥の部屋へと入っていった。


「おいしい!!!」
クロさんのお友達の裁いてくれた魚はなんていうのかは分からないけどとってもおいしくて、自然と笑みがこぼれてしまう。
「だろう?毎年この時期にね、裁いてもらってるんだ。」
クロさんもにこにこしながら端を進めているみたい。
「ここの料理人さん?とはどういうお知り合いなんですか?GD繋がりですか??」
さっきの人の顔を思い出しながら、尋ねると、
「ん〜?ちがうよ。ふふっ。昔の悪友だよ」
と黒い笑顔で答えが返ってきた。
「そ、そうですか。」
これ以上は追究しないでおこう。
「マーティ、それよりさ、お酒、飲まないの?おいしいよ」
そういってクロさんは日本酒のお猪口をすすめてくれた。
「申し訳ないんですが、遠慮しておきます。」
断ったけど、クロさんは引かない。
「どうして?マーティって、いつもみんながお酒飲む席でも飲まないよね。」
どうして?と言外に聞かれる。これが聞きたくて、わざわざ誘ったのだろうか?
「別に対したことではないんです。昔、お酒を飲んでいろんな人に迷惑をかけてしまったらしいので、それ以来飲まないようにしているんです。」
別にたいした理由ではないし、これをいって飲まなくていいのならばそちらのほうがましなので(実際どうなるかは分からないけど。。)、マーティは素直に話した。
「らしい、ってことは、自分では覚えてないの?」
「はい。確かアレクにあとで本気で怒られて、すごく怖かったのは覚えてるんですが…。」
そのときのことを考えると、すごく情けなくなる。自分にだけ、火の粉が降りかかる分にはかまわないのだが、他の人にまで、迷惑をかけていたなんて。いつも穏和なアレクのあの怒りようを考えると、相当、やばかったのだと思う。若気の至りだったとはいえ………。
「ふ〜ん。そうなんだ。でも、ここには私しかいないよ。迷惑をかけるっていっても私だけだし、そんなに強いお酒じゃないから、少しだけなら大丈夫なんじゃない?」
ね。明日非番でしょ?っと「断るなんて許さない」と顔に書いてクロさんがお猪口を差し出す。
こうなったら断れないというのと、まぁ、確かに、と思い、少しためらったけど、結局クロさんの手からお猪口を受け取ってしまった。

クロさんの顔に悪魔の様な笑顔が一瞬張り付いたのに気付かずに………。

数時間後。
「マーティは可愛いね〜」
上気してほんのりとピンク色に染まったほほ。大きな蒼い瞳を潤ませ、体重を遠慮無く、預けてくるマーティ。先ほどから、飲んだ酒量は3合ほどだろうか。徳利は小さいため、自分がどれだけ飲んだか分からなくなりがち。マーティはまんまと罠にはまり、すっかり酔っぱらってしまっていた。
強いお酒じゃない、というのも、嘘ではないけど、本当でもない。
「私にとっては、強くない、ってだけだったんだけど…ね。」
さらさらと流れる髪の毛を梳きながら、感触を楽しむ。
気持ちがいいのか、マーティは体をすり寄せてくる。
「クロ…さん??」
上目遣いで見つめられたら反則だろうと思う。世の中の普通の人間だったら、確実にお持ち帰りされているだろう。
「どうしたの?」
優しく微笑みかけてやると、にっこりと、笑った。
「クロさんって、怖いイメージがあったけど、そんなこと、なかったですね」
ほぅ…。
「怖い…ってどこらへんが、かな?」
わざと、耳元で囁いてみる。体が逃げないように、腰に腕を回しながら。
「っ…ん、え、と…。いじわる…する…から」
くすぐったいのか……な。
クスリ、と笑みが洩れる。
「へぇ…。どんなところがいじわる?教えて、マーティ?」
「……っ…や…っだぁ。」
わざと耳に息がかかるように囁きながら、空いている方の手でうなじをなぞり、あごに手をかけ、こちらを向かせる。
いつも警戒心丸出しのマーティもそそるが、こうして酔って、無防備になったマーティは嗜虐心をくすぐられ、いじめ倒したくなる。
「何がいやなの?教えてくれないと、このままキス、しちゃうよ?」
「やだ、クロさんのいじわる」
必死に腕を突っ張って、いやいやをするけれど、酔って力がでなくなったマーティの力など、なんの問題も無かった。
潤んで今にも泣き出しそうな瞳に自分がうつる。しっかりと固定されていて、逃げ場の無くなったマーティの唇に、もう少しで触れようとしたそのとき。


「クロ!!!」
怒気を含んだ声と扉を激しく明ける音とが同時だった。
「あぁ。早かったね」
近づけていた顔を、一旦離す。マーティがびっくりして、扉の方を見ている。
「はやかったね、じゃない。なんの冗談?」
ずかずかと入ってきて、マーティを私の腕の中から奪っていく。
「別に?ただ、マーティと仲良くご飯食べてただけ、だよ」
ねぇ?と今はもうアレクの腕の中にすっぽりと収まってしまったマーティに同意を求めれば、ちょっとだけ、怖がられてしまう。
「そんな雰囲気じゃ、なかっただろう。ていうか、どこからこんな情報、手に入れたんだ。」
アレクは腕の中にいるマーティの髪の毛を、優しく、優しく梳きながら、目線は私に向けたままだ。ちょっと本気で怒っているようだ。
「さぁ?なんのことだか」
適度な重みと、暖かみのなくなった腕の中。ちょっと寂しいが、まぁ、よく遊ばせてもらったし、そろそろやめてあげようか。
「ま、気をつけることだね。」
「言われなくても。ていうか、お前がこんなことしなければ、あとは大体大丈夫なんだ」
そういいながら、アレクは机の上にのっかんた徳利の数をみて、眉根を寄せる。
「アレク??ごめん…なさい」
マーティは今にも泣きそうな顔で、険しい顔つきのアレクを見上げる。
あ〜あ。アレク、かわいそうに。
「無意識、無自覚って、最高だよね〜」
「最悪、だよ。」
ふぅ、っと肩を落とし、
「とりあえず、もう連れて帰るよ」
マーティの頭をぽんぽん、と撫でると、アレクはため息を吐いた。



----------------------------------END
おちなぁし!!!。。。すみません。。
本当は、後日談とかまで書きたかったんだけど、時間がなくって無理でした。シチュエーションとしては、マーティはお酒が弱くって、ロスに居るときに1回酔っぱらって無意識のうちに周りを誘惑し始めたマーティを守るために奔走したアレクが、かなり本危ないから自重させようと本気で怒って見せたという過去があり、それがもとになってマーティはお酒を飲まないようにしていた。が、なんで飲まないようにしていたかなんて言うのは忘れてしまっているために、本人に自覚はなんにもない。
その情報をとっかから入手したクロさんが、アレクをからかうため、マーティをお酒のみに誘った、みたいな。前設定が多くてすみません。
私はあくまでアレマです。そして、マーティが可愛くって仕方がないです。
おつきあい下さいまして、ありがとうございました。

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