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□醒めない熱
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いつも人がいることが普通になると、一人で居ることが寂しくてしかたなくなる。
今まで、平気だったのに…。
私はいつの間に、こんなにわがままになってしまったのだろう。
醒めない熱
今日は朝から体調が悪かった。
それは自覚していた。体がだるい。
今朝。
西脇さんは早出だったので、目が覚めたらもう隣には居なかった。ぬくもりが消え、誰の気配もない部屋に一人きり…。
くらくて冷たい空気に急に心臓が捕まれたように切なくなり、息が詰まった。
一人で部屋に居たくない。
そんな想いが、思考の邪魔をした。
いつもなら、無理せずにお休みをもらうのだが、出勤してしまった。
きっと疲れがたまってるんだ。
今日は西脇さんも夕方には上がりだったはずだし…。早く帰って寝よう。
そう思って仕事を始めた。
午前中は、それでも普通に仕事をこなした。書類整理がたまっていたので、デスクワークに時間を費やした。
なんか…頭がぼーっとしてきた……かも。
外の気温のせいなのか、自分の熱が上がったのか。
熱を測る気にもならない。
時計を見ると、まもなく13時をさそうとしている。
まだ…お昼なんだ……。
時間が経つのがすごく遅い。昼ご飯の時間だけど、何も食べたくない。何も、飲みたくない。全身を襲う倦怠感。熱が酷くなってきたのだろう。頭がガンガンして、顔があつい。でも、なぜだか妙に寒い。
やっぱり、カゼだ…。隊員に移す前に帰らないと。
今日は堺先生は家に居るとおっしゃっていたから連絡をすれば、来てくれるはずだ。
連絡をして、交代をしてもらわないと行けない。
わかってるけど、体が動いてくれない。
とりあえず…顔を洗って、クスリを飲もう。
イスから立ち上がると、ふらふらする。
足下がおぼつかない。
なんとか洗面所に行き、顔を洗い、水が異様に冷たく感じた。
顔を上げて、鏡を見ると、中にいる人物は寂しそうな顔をしている。
なんで、そんなに寂しそうな顔をしてるの?
「Dr.ちょっといいか」
石川さんの声が聞こえた気がした。反射的に振り向くと、目の前がぐにゃりと歪んで、真っ暗になった。
遠くなっていく意識の中で、石川さんがなにか叫んでいるような、そんな気がした。
続く(2008.07.08)