SOTUS

□コングポップの苦悩
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「今週の土曜日は仕事ですか?」
大学の課題を自室の窓際のデスクでやっているコングポップが、ベッドの上で難しそうな本を広げてにらめっこしているアーティットに声をかけた。

「アーティット先輩。」
「え?」
名前を呼ばれて、驚いたように本から目を離し、アーティットがコングポップを見た。

口が半開きのアーティットの表情に、コングポップは思わず口角を上げた。

「なんだよ。」
「いえ、可愛いから。」
「用もないのに名前を呼ぶなよ。」
コングポップは最初の質問がアーティットの耳に届いていなかったことを知り、
「土曜日は仕事ですか?」
ともう一度同じ質問を繰り返した。

「土曜日?あぁいや、休みだけどアース先輩の買い物に付き合う約束してるけど。」
悪気もなくアーティットは答えるも、コングポップはあからさまに拗ねた表情を返した。
「なんだよ、一緒に来るか?トッドの誕生日プレゼントを一緒に選ぶだけだから、午前中には終わるよ。」
そう聞いて、コングポップの顔は一気に笑顔になる。
「ち、分かりやすいヤツだな。」
へへへと絵にかいたような照れ笑いを浮かべるコングポップを、アーティットは舌打ちをしながら緩く睨んだ。

「じゃ終わったら連絡ください。デパートにいるので。」
「なんだよ、一緒に来ればいいのに。」
コングポップはベッドの端に移動して、体をアーティットの方に倒した。
「行ってほしいですか?」
コングポップは顔をアーティットに近づけた。
「は?お前が来たそうだから、聞いただけだよ。」
今度はアーティットが拗ねた表情をして、本をコングポップとの間に持ち上げた。
コングポップは、ヤレヤレと言いたそうに、口角を上げたまま左右に首を振った後に、人差し指で本を下ろした。
「先輩は?僕に一緒に行ってほしいですか?」
アーティットは小さく"あ"と呟き
すぐに口を尖らせ、目をそらした。
「先輩?」

コングポップは知っている。アーティットがこういう愛情表現が苦手なことを。それを知った上で、いつもこうしてアーティットのコロコロ変わる表情を楽しむのがコングポップの癒しになっている。
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