一護受け・その他

□子ギン×一
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うららかな休日。
桜の花を見ながら一人、団子を食べていた。
ただ一人になりたかった。
平子隊長が藍染副隊長を疑っているこたとを知ってから、たまにこうして一人になりたくなる。
「疲れるな…」
ぽつりとこぼれる本音は、誰の前でも言えない。
そして、こんな時に限ってやってくる奴がいる。
邪険に扱おうとも、必ず子犬のようにやってくる。
「いっちご〜」
きた。
「おらんかって心配するやん。急にいなくならんどいて」
頬をぷっと膨らましながら、足元にまとわりつく。
気持ちが沈んだ時、自分に何かをしてしまいそうになる時、必ず嗅ぎつけてやってくる。
「ギン…頼まれてた仕事あったろ?あれはどうした」
しゅんとしながらも、離れようとはせずにチラリとこちらを伺う。
「だって一護おらんと落ち着かないや。だから、な?一緒に帰ろ。ここは嫌や。一護が連れて行かれそやから」
どこにとか、誰にとは言えなかった。
幼いギンは気づいていたのかも知れない。
一護がもう疲れ果てて、死んで消えてしまっても良いと思っいることに。
「帰ろ」
ギンがさらに言いつのる。
あまり表情のでない顔には、不安だとたくさん書いてあった。
だから迎えにくるのか。
死んでしまいそうだから…一人では帰ってこないだろうから。
始めて優しい言葉と、真心と、ぬくもりを与えてくれた一護を離したくないという思い。
「わかった。晩御飯は何が食べたい?何でも作ってやるよ」
「ほんま?なにがええやろ…え〜とな、う〜んとな。一護と一緒に食べれるなら何でもええ…だからな…僕良い子にするから、置いてかんといて」
ギンは必死に言う。
ギンは聡いから、きっともう何もかもを知っていて言っているんだろう。
一護が平子隊長とも、藍染副隊長とも関係を持っていることも。
もし今日の気分のように、死を選ぶ時がきても、ギンはついてくるのだろうか。
「わかったよ。置いて逝かないから」
満面の笑みが浮かぶ。一護はギンの首に手をかける。
「ええよ」
ギンがいう。
徐々にに力を込めても、逃げる気配すらない。
息が弱くなっていくのを感じ、手を離した。
ギンはむせこむが、それでも一護を見つめ笑う。
「いつまでも一緒や」
あぁ自分はこの小さな子供に捕まってしまったのだと、自覚するしかなかった。
「帰ろ、一護」
手を繋ぐ。
ぬくもりが互いに溶けていく。
どちらからともなく頬をつたうものを見ないようにして、桜並木を通り抜けていく。

もう一人じゃない…
 

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