一護受け・その他
□要×一 桜
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はらり
はらり
舞う花弁。
音しかない耳に聞こえる、静かな演舞。
顔を上げても広がる闇の中の舞台で、私だけの演目。
笑みがこぼれた。
少し昔の君の記憶。
こんな桜が舞う日、君は私の隊に配属された。
緊張気味に挨拶する君を、目の見えない私ですら光溢れて感じられた君を、私は愛しいと感じていた。
そう、光の中で笑う君が見えた気がした。
数年経ち、君が副隊長となり、常に側に君がいる。
存在を感じることができる。
どれほどに幸せで、心豊かであれたろう。
心を動かさず、仕事をこなし日々を未来のために費やす憂いの中で…君だけが光だった。
けれど、あってはならない闇が私の中で生まれた。
君の顔はどんなふうに笑うのだろう。
君の髪はどんなふうに輝くのだろう。
この闇しか移さぬ目が憎いと、気づいた。
苦笑いしか出なかった。
今更、私のような者が君に愛される資格などないというのに…。
あの方の指し示す未来のために、より少ない犠牲のために幾人の将来を潰したことか。
そして、これからどれだけの生贄を差し出さなくてはならないことか。
己を律し、ただ行かねばならぬのに…君の柔らかな空気が私を追い詰めていく。
願わくば、君に幸あれ。願わくば、永久に。
桜の演舞は終わる。
君との思いも決別しなくてはならない。
この朽ち逝く花びらのように…