藍染×一護 B

□夜明け
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風を切って車が走る。
排気ガスを撒き散らしながら。
夜明け前の一時を、朝とも夜ともつかない一時を走る。
振動に気後れしながらも、運転中の男の横顔をチラチラと覗き見る。
普段の柔和な表情は影を潜め、無表情で沈黙を続けている男を。
そして海岸沿いをひた走る真意を知りたかった。突然、教師と生徒という関係以外接点のない男が、深夜に車で迎えに来たのだから理由を知りたいと思うのも当然だった。
「なぁ」
声をかけても応えはかえってこない。
真っ直ぐに前を見つめた瞳の奥に闇を見た気がして自然とふるえが起こる。
その沈黙が二人を包み込み、けれど不思議と居心地の悪さは感じなかった。
誰にでも優しくて、真実は優しいふりをしているだけの教師。
初めて見た時から胸に引っかかりを覚えた人。
藍染惣右介。
眼鏡という仮面で表装をとりつくろい、生徒や教師に心酔されている人。
期待と不安が入り混じった感情を押し殺して、なるべく興味がないような、なんてことないことだという表情をする。
そうすると男の顔を見ていることができず、外を見た。
そろそろ夜が明ける。
海岸線を覆っていた闇が逃げ去り、日の紅が飛び始める。

車は走る。
藍染の望むがままに。
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