一護受け・その他

□拳×一
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鞄を引っさげ、別れの言葉は無しで出て行こうと扉に手をかけた。
明らかに嬉しそうな顔をされたら嫌だからと、廊下を音をたてずに進んでいく。
「一護」
背後から名を呼ばれたが、そのまま歩き去ろうとする一護の肩を強引に手をかけた。
声だけで誰かわかってしまい、半泣きになりながら振り返る。
「なっんだよ」
不自然にならないように、目を逸らしながら言う。
「どこに行く」
「どこだって良いだろ!俺がいなくなった方が良いんだろ」
拳西の言葉に喰ってかかってしまう。
しばしの沈黙。
恐る恐る一護は拳西の顔を覗き込む。
ぽっか―んと口を開き、こいつ何言ってんだ?と頭をフル回転させている拳西の顔があった。
「なんて顔してんだよ」
真剣に考えていたことが馬鹿馬鹿しくなるような表情に、怒りを通り越して笑えてくる。
ぷっくくく
お腹を抱えて笑う一護。
「ひいっ…くっ苦しい」
止まらなくなった笑いに涙がこぼれ落ちた。
「わけわからん。とりあえず行くな」
「なっなんで」
まだ腹を抱えた一護は、先程の緊張を忘れたように尋ねた。
「行って欲しくないからだ!それだけでわかれ」
その言葉に笑いもおさまる。
突然真剣な顔て言われたからだ。
「わかんねぇよ」

鞄を引っ張られ、無理矢理胸の中に閉じ込められた。
「あぁもう!考えるのは性にあわねぇんだよ!好きだ、男同士なんて関係ねぇ。お前が好きなんだ」
力強い腕で、顔を上げさせられる。
「好きだ」
唇に唇があたる。
目もつぶれぬまま、驚きのあまり身動きできない。
唇が離れると拳西はバツが悪そうに腕から解放しようとする。
けれど一護はその腕を引き止め、再度口付けをした。二人はなだれ込むように、一番近い一護の部屋へと消えていく。

こっそりと覗いていた、平子がけっと悪態をつきながらも去っていく。
「幸せ者や」
そう最後に呟いて。
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