突破記念小説

□堕ちた者達
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2年前。

黒崎前当主の三回忌。

幼馴染の恋次は、すっかり荒んだ目をして悲しそうに笑う少年を見つめた。
喪服の色をそのまま周囲に張り巡らしたように、小雨が降る空を見つめて溜息をついている少年を。

両親の死後、財産等のごたごたからかすっかり笑わなくなった少年・一護をどうにかして元に戻したいと必死に友達を演じてきたというのに、恋次から一護はもうかなり遠い存在になっていたかのようだった。

執事が一護を傀儡のようにして、黒崎家を乗っ取ろうとしていることは誰の目から見ても明らかで…
友情ではない恋情が、恋次を突き動かしていた。

やっと掴んだ情報。
これで、一護を元の一護に戻すことが出来る。
また、笑ってくれるかも知れない。
そんな淡い期待を抱きながら告げようとした。

「あいつは!あいつは一護の両親を…」

「知ってるよ…だからそれ以上言わなくて良い恋次」

遮るように、諦めたような視線が絡む。

一護が知っていることに驚愕を隠せずにいる恋次を、一護はせせら笑った。

「俺は、お前が思っているほど綺麗な存在じゃない」

「一護」

「もう帰れ、そして二度と屋敷に来るな」

恋次に対して、最終通告。

自分から落ちたのだ…そう言っているかの様だった。

ここから、一個人としての人格を捨て去る…あの人の傍ら以外は。

そう言われているかのようだった。

恋次は苦虫を潰したように、唇をぎりりと噛むと扉から飛び出た。

雨は本降りとなり、大地を濡らす。

その一滴は…かつての友情との別れであった。
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