藍染×一護 B

□希望と絶望と B
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「惣右介!」

呻く少年を見やり、ため息をついた。
何度となく告げる自分の名ではない名前。
こぼれる涙。
苦々しい思いが浮き上がる。
よもや見ず知らずの他人を、この家にいれてしまうとは…とすら思ったがそれでも少年を見ると、出会うべくして会ったのだろうとすら感じた。
豪雨によって濡れ肌にべたりとくっついた着物を脱がせ、体を拭い新たにパジャマを着せて寝かせる。
すぐに自身も服を着替え、部屋のエアコンを暖房に切り替えた。
その間も目を醒まさぬ少年は、ただ悪夢にうなされながら涙を流し続けている。

少年はやせ細り骨と筋ばかりなのが痛々しく、けれどそればかりではない竜弦にとって心惹かれるものが確かにあった。
どうしてかというはっきりとしたものがあるわけではない、ただ守りたいと熱く思った。
そう、だから気づけば涙を拭い、慰めるように湿った頭を撫でている自分がおかしい。
「泣くな」
優しく、ただ優しく囁く。
届くように。
悪夢に捕らわれ、希望を無くしたかに見える少年が浮上できるように。
「惣右介…」
「大丈夫だから、ゆっくりお休み」
「うん」
ようやっと落ち着いたように、にこりと笑みながら、すぅすぅと穏やかな寝息が聞こえてくる。
そのまま、乾いてサラサラとなびく髪を撫でながら、目を閉じた。
「君の傷が癒えるまで、ここにいたら良い。大丈夫、私が守ってあげるから」
その『惣右介』とかいう奴からも、君をそんなままにして放っておいた者達からも…だからその瞳に私を写しておくれ…竜弦は見つめながら、何度も祈るように唱え続けた。
少年に届くように。
少年が微笑むことを思い出すように。

ゆっくりと時間は流れた。
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