藍染×一護 B
□希望と絶望と C
1ページ/2ページ
竜弦が食事を作っている間、一護は玄関前の掃除をする。
あれから数日、名前を聞くだけでそれ以外何も聞かずに置いてくれている竜弦。
心地よい空間が、一護の荒んでいた心身を正常な状態へと戻しつつあった。
心なしか体つきがふっくらとし、顔色もよくなっている。
竜弦の作る美味い料理によるものかも知れない。鼻歌すら歌いながら、広い玄関に箒をかける。
嫌悪感や罪悪感、喪失感も今は影を潜めていた。
「ふんふ〜ん」
竜弦が仕事があるだろうに、自分のいる場所にいてくれることが一護は嬉しかった。
なんとなく側にいてくれる。
無理に頑張れとも言わず、忘れてしまえとも言わず、ただいてくれること…一護自身が気づかなかった、求めていたこと。
絶妙な距離感で見守ってくれていると思えた。
「ふんふ〜ん」
鼻歌を歌う。
長いの歳月の中で、自分が歌えるようになるなんて思ってもみなかった。
そんな自分が可笑しくて、さらに笑みを濃くする。
ここにずっといられないことはわかっていた。
それでも、もう少しだけいたかった。
例えそれが、あの人とどことなく似ていることに起因しているとしても…。
気づかないふりをして、掃除を続ける。
時折見せる眼差しに気づく者はいない。