突破記念小説
□兄の誓い、弟の苦悩
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優しいく耳元に響く声。
「一護、起きなさい。学校に遅刻してしまうよ」
毎朝、起こしてもらいたくて一護は目覚まし時計を止めてしまう。
そんなことも踏まえた上で、惣右介は起こす。
「んぅ…あと5分…」
「ご飯が冷めてしまうよ」
頬にちゅっと音を立ててキスをされ、甘えたの一護は惣右介に抱き上げられる。
「しょうのない子だ」
口元に笑顔を浮かべたまま、惣右介は洗面所まで運んだ。
毎朝おこなわれる行事。
再会してから10年…一護はだいぶ甘えるようになった。
始めはあんなに他人行儀だったのに。
15年前、両親の離婚とともにまだ幼い一護は母に、兄である惣右介は父に引き取られた。
10年前、母の訃報を聞きつけかけつけた時…心無い大人達に傷つけられた一護は、虚ろに惣右介を見つめたのだった。
「この度は遠路はるばる…」
そう告げる一護を有無を言わさず抱きしめた。
周囲のざわめきなど無視し、別れ別れになっていた兄だと、これから一緒に暮らそうと告げた時の一護の表情。
それを惣右介は忘れることができない。
【必ず守ろう。これから先ずっと】
その誓いはいまだ破られることはない。
洗面所で顔を洗う横で、タオルを渡す。
ご飯の匂いが一護の覚醒をさらに促した。
ぐ〜ぅ
お腹の音がいつものように朝を告げるのだった。