藍染×一護 A

□迷い子
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少しだけ一人になりたくて。
たまに寂れた喫茶店で珈琲を飲む。
ここは、少し古ぼけた木製のテーブルと柔らか過ぎないソファーが気に入っている。
そして何より、知り合いが来ないような、わざわざ家からも学校からも遠いソコは、過ごしやすい。
人に干渉しないマスターと、数人の常連客…ジャズの音。
注文もとらずに運ばれてきた珈琲は、いつも頼んでいるものと同じ。
砂糖もミルクもいれず、香りを味わう。
「ほぅ」
人心地。
毎日の戦いが嘘みたいな静さ。
全てが嫌になっていた。
もう何もかもが嫌だった。
だから絶対に肌身から離してはいけない死神代行証も置いてきた。
もう一口飲む。
口に苦味がしみる。

〔黒崎くん〕

ん?
周囲を見渡すが知り合いは一人もいない。
声に対して反応している人もいない。

〔こっちだ…〕

窓の外を見やると、その場に似つかわしくない存在。
敵となった男が、白い服を身に纏い手をふっている。
「てめっ」
大声を出しそうになり、マスターに睨みつけられ口を噤む。
一人になりたくて来たのに…そう思いながら、まだ熱い珈琲を一気に飲み干し、代金をテーブルに置くと店を飛び出した。
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